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フィリピン英会話ネット
2015年06月06日

100万人を雇用するフィリピンのBPO産業

フィリピンは近年高い経済成長率を達成している。例えば2012年は6.8%、2013年は7.18%、そして2014年は6.24%を達成した。この2012年以降の成長率はタイ、ベトナム、マレーシア、インドネシアといった周辺のASEAN諸国と比べてもフィリピンが首位である。フィリピンのこの10年を振り返ると、フィリピンはいま急速な産業構造の変化を経験していると言っても大げさではないだろう。

フィリピンの経済成長率
フィリピンの経済成長率.png

ASEAN諸国の経済成長率比較
フィリピンGDP成長率比較.png

フィリピンのBPO産業


この産業構造の変化をもたらしているのがBPO産業(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)である。ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)とは、企業運営上の業務やビジネスプロセスを専門企業に外部委託することを指すが、フィリピンの場合はアメリカを中心とした海外の企業からコールセンター業務を中心に委託を受けている。

2013年にフィリピンのBPO産業は90万人の労働力を雇用し155億ドルの総収入を得た。これはフィリピンのGDP2720億ドルの5.7%にあたる。フィリピンの労働人口は約4000万人だから、労働人口の2.25%でGDPの5.7%を稼ぎ出したことになる。BPO産業は2004年には10.1万人を雇用し13億ドルを稼ぎだすに過ぎなかったものが、その2年後の2006年には24万人を雇用し32億ドルの売上へと倍増した。そして、ほんの10年の間にその規模は10倍となった。

ちなみに人口の約1割が海外に居住又は就労するフィリピンは海外出稼ぎ労働者(OFW)から年間230億ドルの送金を受けており、これはGDPの8.5%の相当するが、このままBPO産業の成長ペースが続くと2016年には130万人を雇用し、250億ドルを稼ぎ出す産業となり海外出稼ぎ労働者からの送金総額を抜くのではないかとさえ見られている。さらには、2012年の段階で労働人口の32%が従事し、GDPの11.8%(256億ドル)を生み出した農業部門を付加価値額で抜くのも時間の問題だろう。また、BPO産業は労働者一人当たり2.5人の追加的雇用を小売り、交通、サービス部門に生み出すと見られているので、経済への波及効果はさらに大きくなる。最近街中に増えてきたスターバックス等の決して安くない飲食店やセブンイレブンを初めとした24時間営業のコンビニエンスストアーの増加も、コールセンター従業員を顧客としていると考えれば納得できる。

イーストウッドの成長


ここで現在、マニラ首都圏でコールセンターの中心地の一つとなっているケソン市のイーストウッド(Eastwood)について見てみよう。

イーストウッドは1997年にメガワールド・コープのアンドリュー・タンによって開発が始められるまでは、寂れた繊維工場が林立するエリアだった。タンはこの一帯16ヘクタールの土地をコールセンター、マンション、そしてショッピングエリアとして開発し、1999年にはPEZA(Philippine Economic Zone Authority:フィリピン経済区庁)からITパークとして認定を受け、税制優遇措置を得た。

これによりイーストウッドは現在59の企業で60000人が働く地域となり、その従業員を中心に25000人が居住、500の店舗が展開する一大複合エリアに成長している。ちなみに、日本の東映アニメーションもイーストウッドにスタジオを構え、250人のスタッフが動画を作成し、太いインターネット回線を用いて日本に送っている。あの『セーラームーン』も『ワンピース』も動画はフィリピンで制作されていたのだ。

イーストウッドの様子
Eastwood-City-Night-031.jpg

フィリピン中央銀行の調査によればBPO産業の従業員は平均で$8,849(2012年)を稼ぐが、これはマニラの最低賃金(日額481ペソ)の3倍にあたる。大学新卒の社会人の給与は一般的には最低賃金+α程度なので、新卒でコールセンターの職につけばいきなり一般の3倍の給与が得られるということを意味する。

サービスが海外へ売れるようになった


一昔前までBPO産業の中心地はインドだった。それが2010年にフィリピンの売上額がインドを抜きさり、世界一へと躍り出た。その理由の一つに、フィリピンの英語力の高さがある。インドでは大卒者のうちBPO産業で採用できるレベルの英語力を有しているものは10%程度とされているが、フィリピンではそれが30%に上る。特に、顧客であるアメリカ人やオーストラリア人にとって聞きやすい英語を話せることがフィリピンが好まれる理由である。

このような変化がもたらされたのは、何よりもまずインターネットが普及したことが背景にある。つまり、これまでは国内でしか販売できなかった「サービス」がインターネット回線を通してフィリピンに居ながらにして海外へ販売できるようになったのだ。これまでフィリピンが輸出できる商品といえば、鉱物資源であり、農産物であり、電化製品でありといった具体的な形をともなった「モノ」だった。そして、サービスを販売するためにはフィリピン人自身が海外へ出稼ぎに行き「労働力」として販売する必要があった。それが、ネット回線を通して海外へ出ることなく労働力を販売できるようになったのである。

フィリピンBPO産業の課題


ただし、フィリピンのBPO産業もすべてがバラ色というわけでもない。まず、アメリカを主な顧客としたコールセンターの場合、勤務時間をアメリカに合わせることになるので、フィリピン人が本来就寝しているはずの深夜に働くことになる。このため、コールセンターの従業員は昼夜逆転した生活になることが多く、体を壊す従業員が続出している。また、BPO産業は2012年だけでも137000人を新規雇用したが、これはフィリピンの大学新卒人口の25%にあたる。すでに、優秀なフィリピン人を継続的に雇用することが難しくなってきているのだ。

マカティのビル群から見上げた空
makati sky1.jpg

次に、現在、フィリピンのBPO産業の65%はコールセンター事業が占めているが、今後は電話によるサービスだけでなく、メール、SNS等の多様な媒体を使った事業が増えてくるので、そうした変化に迅速かつ柔軟に対応していく必要がある。さらにはWEBシステムやアプリの開発等、より付加価値の高い事業への成長が求められている。

フィリピンの一人当たりGDP(購買力平価 USドル)
フィリピン 一人当たりGDP.png


【参考】
Philippines’ Rise as Call-Center Nation Lures Expats Home

Phl closes in on India as top BPO site

It’s official: PH bests India as No. 1 in BPO
posted by philnews at 20:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | フィリピン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年06月01日

フィリピンの自転車事情

フィリピンに、特にマニラ首都圏に滞在してしばらくすると気づくのは、日本と比べて自転車をあまり見かけないことだ。国民全員が自動車やオートバイを買えるほど裕福なわけではないのに、それより安いはずの自転車もそれほど普及していない。そして庶民の足はバス、ジプニー、トライシクルといった公共交通機関である。大通りに沿った長距離移動はバス(一部LRTやMRTのような軽量高架鉄道)、車で30分以内の距離ならジプニー、そして、ジプニーを降りて家まではトライシクルと言った具合だ。

bike1.jpg

目的地が歩いて20分程度の距離ならば、自転車に乗ってしまえば5分で着きそうなものだ。しかし、これくらいの距離だと歩くことはまれでトライシクルに乗ってしまう。それだけで往復で何十ペソかがかかる。

マニラ首都圏で自転車が普及しない8つの理由


ではどうしてマニラでは自転車が普及しないのだろう?その理由を思いつくままに挙げてみる。

1. 一般道路は自動車が我が物顔で飛ばしているので自転車が走れない。
2. 歩道(側道)は自動車が駐車して塞いでいるので通れない。
3. EDSA大通りのような大きな道には信号や横断歩道がないため、横断するためには数キロおきにある歩道橋を使うしかないが、その際、自転車を担がなければいけない。
4. せっかく自転車に乗って目的地であるスーパーやお店に到着しても、自転車を止めるスペースがない。
5. 自転車に鍵を付けても、鍵を壊されるか担いでそのまま盗まれる。
6. 自転車本体が盗まれなくても、放置している間に付属部品が盗まれる。
7. 乾季は暑いので自転車を漕ぐと汗だくになる。
8. 乾季は良くても雨季はびしょ濡れになるので自転車は不便である。

少し挙げてみただけでも、どうやらマニラでは自転車に乗れる条件が整っていないと言える。とくに3番目のEDSA大通りが横ぎれないというのは深刻で、それこそ車体重量が20キロを超えるようなママチャリは歩道橋を担げるわけもなく、自転車は大通りに囲まれた狭い範囲の移動手段としてしか用をなさなくなる。

これが田舎へ行くと、それなりに自転車は使われていて、特に、村の高校生あたりが通学のために乗っている風景をよく見る。地方では車もそれほど多くないし、通行を妨げる大通りもない。すると購入費用以外にはお金の掛からない自転車が十分魅力的な交通手段となるのだ。

ryanbikes.JPG

ちなみに、フィリピンでポピュラーな自転車の種類はマウンテンバイクである。日本で見かけるシティサイクル(いわゆるママチャリ)や、ロードバイク、そして最近流行りのクロスバイクはほとんど見かけない(ママチャリは日本の中古車が輸入されて安価?で売られている)。舗装されていない田舎の道や、舗装されていても凸凹の多いマニラ首都圏では、頑丈なマウンテンバイクが合っているのだろう。

マニラ首都圏の主な自転車レーン


一方、マニラにも自転車を普及させようとする人たちはいるようで、街中に自転車レーンを設置する動きもある。自転車は渋滞を緩和し、環境に優しく、健康にも良いと考えられるからだ。具体的には以下の6つの自転車レーンがその主要なものである。

- Ortigas to Santolan along EDSA northbound (2.105K)
- White Plains from EDSA to Temple Drive in Quezon City (982.6 meters)
- Marcos Highway from Evangelista Street to Sumulong Highway in Marikina City (9.14K)
- Magallanes to Ayala Avenue along EDSA in Makati City (1K)
- Commonwealth Avenue from University Avenue to Tandang Sora in Quezon City (2.92K)
- Marikina Bike Lanes

この他、フィリピン大学ディリマン校構内やアテネオ大学マニラ校構内にも自転車レーンが設置されている。但し、上に挙げた自転車レーンの多くも、自転車専用道を新たに設置しているわけではなく、あくまでもこれまで歩道として利用されていた大通りの側道の一部を赤く塗って自転車レーンとしているだけだったりする。そのため、実際に自転車レーンを走ろうとしても歩行者を避けて走る必要があるため、結局はこれまでと同じく自動車道を走り続ける自転車利用者も多い。

bike2.jpg

マニラに自転車が普及する条件


さきほどマニラに自転車が普及しない8つの理由を挙げたが、これらは1.道路及び歩道橋の整備状況 2.パーキングスペースの整備状況 3.盗難の防止状況 4.気候の問題 の4つにまとめられる。もちろん、公共交通機関や自家用車と自転車の購入・維持費用との損得勘定といった経済条件もこれに加えられる。

これらのうち、気候条件は操作不能なので考察の対象からはずすとして、政策的に操作可能なのは1〜3である。また、盗難防止はいまのところ困難であるので、人為的に整えられるのは道路及び歩道橋の整備とパーキングスペースの整備の2つということになる。その中でも短期的に実施可能で効果が高いのは、歩道橋への自転車用スロープの設置であろう。自転車で走っていて目の前を大通りに遮られると、もう、そこから先へは行けず途方に暮れる。この状況を改善することこそが、まず第一に必要なことだと思えるのだ。

このように、日本では普通に乗りなれている「自転車」ひとつとっても、それを日常的に利用できることは極めて経済的、社会的、インフラ的な様々な条件が整った上で初めて可能となっていると言えるのではないだろうか?

【参考】
The Bicycle Diary:Inquirer
Pedal to the metal: Are we really ready for the bike lanes that have sprouted around the metro?
posted by philnews at 16:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | フィリピン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2013年10月16日

フィリピン・ボホール島でM.7.2の地震


10月15日午前8時15分、フィリピン・ボホール島でマグニチュード7.2の大地震が発生した。

地震の震源地はビサヤ諸島の一つボホール島のカルメン町の南東2kmで、観光地として有名なチョコレートヒルズの近く。ボホール島だけでなく、フィリピン第2の都市セブ島やその他のビサヤ諸島およびミンダナオ島など広範囲に渡って強い揺れが観測され、多くの被害を出している。

フィリピン各地の震度


10月16日午後7時発表のNDRRMC(フィリピン国家災害対策評議会)のレポートによると、各地の震度は以下の通り(カッコ内は日本の震度);

震度7(震度5強) Tagbilaran, Bohol and Cebu City
震度6(震度5弱) Hinigaran, Negros Occidental and Dumaguete City
震度5(震度4)Iloilo City; La Carlota City; Guimaras Island; Abuyog, Leyte; Ozamis City; Sibulan, Negros Oriental; Camiguin Island; Gingoog, Misamis Oriental; Cagayan de Oro City
震度4(震度3)Roxas City; Masbate City; Bulusan, Sorsogon; Hinunangan; Tabon Tabon; San Pablo; Bato, Leyte; Patnungon, Antique; Dipolog City; Bacolod City; Naval, Biliran; Bayawan City; Baybay, Southern Leyte; San Jose Antique; Guihulngan, Negros Oriental; Butuan City; Tacloban City
震度 3 (震度2) Davao City; Canlaon City; Cotabato City; La Costellana, Negros Occidental; Zamboanga City; Borongan City, Samar; Bukidnon; Tarragona, Davao; Surigao City; Laoan, Antique; Cobatato City;Banisilan, North Cotabato; Ptongan, Zamboanga del Norte; Polanco, Zamboanga del Norte; Labason, Zamboanga del Norte; Manukah, Zamboanga del Norte; Balderama, Antique; and Barbaza, Antique

フィリピンの震度(Intensity)の尺度は日本のものとは異なっており、最高震度を10、最低震度を1とした10段階の尺度であり、震度7(Intensity 7)は日本の震度5強に相当する。
「震度7(破壊的): ほとんどの人が恐怖を感じ屋外に飛び出る。床に立つことは難しく、屋内の重い物や家具がぐらついたり倒れたりする。教会の大きな鐘が鳴る。老朽あるいは貧弱な建造物はかなりの被害を受け、頑丈な建造物にもわずかな被害が出る。堤防や道路、ブロック塀にひびが入る場合がある。一部で地盤の液状化および側方流動、地滑りがみられる。木は強く揺れる。」 フィリピンの震度

フィリピン各地の被害状況


地震による被害状況は16日午後7時現在でボホール島で134人、セブ島で9人、シキホール島で1人の少なくとも合計144人の死亡が確認された。またボホール島では23人の消息が不明。負傷者は291人にのぼる。
またビサヤ地方の3州、39市・町だけで300万人が影響を受け、このうちボホール島では7430家族(3万7000人)が避難生活を送っている。
ボホール島ロボック町およびバカラヨン町、セブ島セブ市の教会が倒壊、両島の政府機関や病院、空港、港湾施設、ショッピングモール等にも半壊、一部損壊などの被害が生じている。
また、各地で橋の倒壊や道路への亀裂が報告されており、震源地となったボホール島では通行不能となった道路が4つおよび崩落した橋が20。

ボホール島の被害状況(画像35枚)

フィリピンの地震


フィリピンでは2000年代以降、マグニチュード7.0を超える規模の地震は4回起きており、今回のボホール地震は5回目のものとなる。最近では2012年8月31日にサマール島で起きたマグニチュード7.6の地震があるが、その時の被害は比較的軽微(死者1名)であった。
しかし、今回のボホール島地震は被害規模から見ると、1600年以降で5番目の規模となり、近年では1990年に起きたルソン島大地震以来のものとなる。同様に、被害規模で見ると、昨年(2012年2月)に同じビサヤ諸島の一つネグロス島で起きたマグニチュード6.7の地震では死者51人が出た。

(2013年10月17日0時更新)

【参考】
NDRRMC(フィリピン国家災害対策評議会)
Deadly Philippine quake hits Bohol and Cebu
List of earthquakes in the Philippines
posted by philnews at 02:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | フィリピン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2012年12月19日

安倍総裁の掲げるインフレ目標政策


2012年12月16日投開票の第46回総選挙では安倍晋三率いる自民党が衆議院480議席のうち294議席を獲得し圧勝した。

今回の選挙の争点は、脱原発、TPP参加の是非、そして消費増税などが挙げられていたものの、新聞の出口調査や選挙結果を見ると、有権者が最も重視したのは景気回復であったと考えられる。

安倍総裁の掲げるインフレ目標政策


そこで注目すべきなのが安倍総裁のうちだした経済政策(景気対策)である。安倍総裁は自民党の経済政策としてインフレ・ターゲット政策を打ち出した。安倍総裁の提唱するインフレ・ターゲット政策は以下の内容にまとめられる。

1. 3%のインフレ目標の設定
2. 政府と日銀の間で政策アコードを結ぶ
3. 日銀によるコミットメントと説明責任
4. 必要ならば日銀法の改正
5. 物価安定だけでなく、雇用の最大化
6. インフレ率3%までは無制限の金融緩和
7. インフレ期待の形成を目的とする
8. これらの効果を高めるための公共投資の拡大

これは単なる量的緩和に留まらず、インフレ期待の形成に働きかけることを目指したリフレ政策(デフレからマイルド・インフレへと復帰させる政策)であることが見て取れる。また、これはこれまでリフレ論者が提唱してきたことを見事に具体化したものでもあると同時に、金融緩和だけでなく、それを支援するための財政政策もセットとなっていることが特徴である。

市場の反応


安倍総裁のインフレ目標政策の発表を受けて、いち早く反応したのが為替市場と株式市場であった。デフレは通貨高(円高)を必然化するが、この発表を受けてしばらくして、これまで進行していた円高が円安へと方向転換した。同時に、輸出企業を中心とする株価も上昇へと転じた。

yen dollar.jpg
直近3ヶ月間の為替の推移

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直近3ヶ月間の株価の推移

円高、株安については3年間も政権を担当した民主党がなんら有効な対策を打てなかったにも関わらず、まだ、首相にさえなっていない野党党首の演説一つで、見事なまでに円安・株高へと転換したのである。

民主党が選挙で大敗した理由


筆者は2009年の総選挙の前に「本当は一番重要な「雇用・経済」の項目をマニフェストの一番最後にもってきて、選挙演説では税金の無駄づかいと天下りの根絶に焦点を置いているような政党が、どうやら政権与党になってしまうようだから、日本経済は今後4年間、回復しないということになるのかもしれない。」と書いたが、残念ながらこの予想が的中してしまった。民主党政権成立後には、その経済政策がどれも個別のミクロ対策であり、マクロ政策が一つもないことを批判してきたが、これも最後まで改まることがなかった。

民主党政権は経済政策を持っておらず、財務省および日銀のいいなりとなるまま消費税増税、復興税導入、そしてデフレ政策の継続を推進し、その結果、空前の円高進行、失業率の高止まりを特徴とするデフレ不況から抜け出すことができなかった。民主党は政権にある間、デフレ脱却を掲げていたものの、安部総裁がインフレ目標政策を掲げたとたんに野田首相を始めとする民主党議員がこれへ一斉攻撃を加えたことなどみても、民主党のいうデフレ脱却がポーズに過ぎず、口先だけのものであったかがわかる。

民主党はマニフェストで掲げた子ども手当て、最低保障年金、高速道路無料化などが予算不足によりことごとく挫折する一方、マニフェストにはなかった消費税増税法案だけは成立させた。そもそもパイを拡大することなく、分配の量だけ増やす政策が実現不可能なことくらい最初からわかっていたのだ。

国民はこうしたマニフェストで掲げた政策は実現できず、そこにない政策だけ「命を賭けて」実現させた民主党に心底失望したのである。今回の自民党の圧勝は自民党への積極的支持というよりも、民主党への失望がもたらしたのである。

安倍政権の展望


安倍総裁の掲げるインフレ目標政策の前途も万全とは言えない。なぜなら、朝日、毎日を中心とするマスコミ各社はこれまで徹底してインフレ目標政策を批判してきたし、デフレで苦労しているはずの経済団体の代表らの中にもインフレ目標政策を批判するものがでるほどに、この国は「もう経済は成長しない」だの「デフレで当然」だの考えている人たちが多くいる。

さらには、今回の選挙で圧勝した自民党内にこそ根強いデフレ派議員がいるのである。例えば、谷垣前総裁、そして石破幹事長などは、2010年の参院選で自民党がインフレ目標政策を掲げた際、自党の公約であるにも関わらず、これに否定的なコメントを述べている。また、振り返れば90年代から09年の政権交代まで、デフレ政策を許容したきたのは自民党自身であった。

こうした背景を考えると、安倍総裁が何者にも妨害されず、インフレ目標政策を実施に移すことは容易ではない。そのためにも、まずは、財務大臣、そして最大の山場は来年(13年)4月に任期が切れる白川日銀総裁の後任人事にあることは言うまでもない。ここでリフレ派の人材を登用することができたならば、その後はかなり安心できる。

インフレ目標政策の導入は、この、最初の4ヶ月で趨勢が決まるといっても過言ではないだろう。

-付記-

安倍総裁のインフレ・ターゲット政策に関するスピーチ(該当箇所)


安倍総裁はこれまでもインフレ目標政策が持論ではあったものの、政権奪取後の経済政策として明確に述べたのは11月7日の日本アカデメイアでのスピーチでのことだった。以下はその該当箇所を字起ししたものである。

私たちが政権を取ったら、日本銀行と政策アコードを結んで、インフレターゲットを設けたいと思います。目途ではなくてターゲットであります。日本銀行の総裁及び日本銀行には、コミットしていただいて、それが達成できなければ、責任を取ってもらう。達成できない場合は、その説明責任を果たしてもらうということであります。(中略)

そこで、大切なことはしっかりと、日本銀行が責任を伴い、コミットしていく。私は3%が良いのだろうと思いますが、ここは専門家の皆さんに教示をしてもらって、インフレターゲットをアコードの上に設定をしていく。これが出来なければ日銀法を改正して、日銀法の中にある物価安定ということが使命として書かれていますが、物価安定だけでありますからもう一点、多くの中央銀行が背負っている役割である雇用をちゃんと守っていく、あるいは雇用を最大化していくという実体経済に対する責任も負ってもらい、さらには政府との協調の中で、インフレターゲットを設定するということも書くべきではないのかなと思います。

そして手段については、日本銀行が決めていくことでありますが、私見を言わせて頂ければ、量の額で制限を組むのではなく、あくまでも制限は3%であれば3%なんですよ。3%達成するまでは、基本的に無制限で、金融緩和をしていくという発表をしていただくという必要があります。これはECBとか、あるいはアメリカであったQE1、2、3の形式に近いものではないだろうかと、こう思うわけであります。それによってインフレ期待に変えていく必要がございます。

実際にこれはインフレ期待が出てきてインフレになるまでは、少し時差がかかるかもしれない。ずっと我々は今まで、デフレを続けていますから、その後遺症として、実際に起こるまで時差が長くなってしまうかもしれませんが、その暇はありません。であるならば、まずは政府の支出でそれを引っ張っていく必要があると思います。つまり正しい公共投資を、マクロ政策的に行っていくことを求められています。
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2011年12月23日

フィリピン・ミンダナオ島を襲った台風21号(最新情報)

2011年12月16日深夜から17日未明にかけてフィリピン・ミンダナオ島北部を中心に襲った台風21号(現地名:Sendong センドン、国際名:Washi ワシ)の被害について、これまでに明らかになったことは以下の通り

被災地域 13州 8市・52町 766バランガイ
被災者数 102899家族 674472人
避難者数 62070家族 327590人

死者 1080人
負傷者 1979人
不明者 1079人(未確認)
救出された者 442人


死者 1080人のうち、カガヤンデオロ市(Cagayan de Oro)674人、イリガン市(Iligan)312人となっていることからも、今回の台風被害はこの2つの地域に特に集中していることがわかる。これらは先日報告したとおり、降り注いだ雨(180mm/24時間)が主要河川に沿って鉄砲水となって押し寄せた結果である。

不明者数については昨日発表の51人から突然1000人以上の増加となっているが、これは上記2市から報告された数字を足したものであり、当局もこの数字の正しさについては未確認の状態であるとのことだ。

なおこの台風ではミンダナオ島の他に中部ビサヤ地域、特にネグロスオリエンタル州での被害も107バランガイで12069家族、60345人が被災するという大きな被害が出ており、10の避難所に約5万人が避難している。

また、ミンダナオ島南部に位置するダバオ市付近では被害は報告されていない。

【出典】NDRRMC Report No.16 (pdfファイル)
    http://www.ndrrmc.gov.ph/
posted by philnews at 19:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | フィリピン台風・洪水 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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