総務省の発表によると、日本の失業率は6月も悪化し、5.4%となったとのことだ。6月の就業者数は6300万人と1年前に比べ151万人減少、完全失業者数は348万人と1年前に比べ83万人増加。完全失業者数は8か月連続の増加となった。
昨年(2008年)のリーマン・ショック発生以前の日本の失業率は4%だったから、それから1.4%上昇したことになる。たったの1.4%と考える方もいるかもしれないが、日本では失業率が1%上昇するだけで、失業者が約60万人生まれる。例えば、身近に失業者が一人いて、その人を就業させるためには大変な努力が必要となるが、それが、たった1%の失業率の増加で60万倍の努力が必要となるのである。失業率1%の違いというのは重いのだ。
以前、与謝野財務・金融・経済財政担当相は「デフレがもたらす失業率の増大、物価の下落、経済の収縮、われわれとしてはそういう状態、経済の底抜け状態を絶対に防ぐ、デフレというものは到来しないと確信しながら補正予算を作成した」と発言していたが、それ以降も失業率は上昇し、物価指数は下落を続けている。これをデフレと呼ばずして何をデフレと呼ぶのだろう?
ちなみにフィリピンの失業率は政府発表で7.5%(4月)、民間調査機関(SWS)発表で34.2%(2月)である。SWS発表の統計が異常に高い値を示しているのだが、これはフィリピン各地での1200人を対象とした聞き取り調査の結果だということなので、統計的には疑問のある数値だ。ここでは、少なくともフィリピンの失業率は日本よりも高いということが確認できれば良い。
しかし、フィリピンの失業は日本ほど深刻ではない。それは、皆が当たり前に失業しているからだ。フィリピンの場合、失業しても、ごく普通に、親兄弟、親戚縁者のもとに同居し、家事や家業を手伝ってしのいでいる。また、一旦失業しても、企業の側が雇用を拡大すれば、簡単に再就職することができる。つまり、雇用の流動性も高いと言える。
一方、失業は日本にとってのほうが深刻だ。なぜなら、一般的に、日本では失業したからといって、親兄弟、親戚を頼ることができないうえに、一度失業すると、次の仕事を見つけるハードルは極端に高くなる。
日本はソーシャル・セキュリティがそれなりに発達しているから、失業しても失業保険が一定期間支払われたり、各自、保険に加入するなりしてなんとかしのいでいる感がある。一方、フィリピンは、そもそもそうしたセーフティーネットが発達していないので、全ては親兄弟、親戚という血縁によるセーフティーネットを確保し、それが機能している。
フィリピンで失業が深刻でないというのは、政府や社会がそもそも信頼できないことの裏返しなのだ。