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フィリピン英会話ネット
2009年10月07日

岩田規久男「日本銀行は信用できるか」

書評: 岩田規久男「日本銀行は信用できるか」(講談社現代新書)

日本は1992年からデフレを伴う経済の長期停滞である「失われた10年」を経験した。インフレ・デフレを表すGDPデフレーターは1997年を除いて現在に至るまでマイナス、つまり、デフレである。そのため国の経済力を示すGDPも、名目で見ると、2007年の名目GDPが1997年の名目GDPと同じ、つまり、日本は10年間全く成長していなかったことになる。そして、2008年にはアメリカを震源とする金融危機、世界同時不況に巻き込まれ、2009年の名目GDPはなんと1992年、つまり17年前と同じ水準にまで落ち込んでしまった。現在、如何にしてこの大不況から抜け出すのかが国としての最大の課題として突きつけられている。

[世] 名目GDPの推移(日本)

一般的に、政府が持つ経済対策(景気対策)の手段としては財政政策と金融政策の2つがある。このうち、財政刺激策は中央政府によって行われ、金融緩和は中央銀行(日銀)によって行われる。

にもかかわらず、日本のメディアは財政支出についての政治家の発言は事あるごとに報道するものの、日銀の行う金融政策についてはほとんど伝えない。例えば、民主党による補正予算の停止や、亀井静香金融相によって提唱された「金融モラトリアム」については連日メディアで騒がれていたが、日銀が「緊急対策」であった社債買入れの解除を示唆したことや、同時に企業金融支援特別オペの継続の有無が懸念されたこと、そして、日銀は9月のマネタリーベースを減少させていたこと等はどれくらいの国民が知っているだろうか?

しかし、近年、経済学の世界では景気対策については財政支出よりも、金融緩和のほうがより重要であるとの見方が主流でさえある。


岩田規久男 「日本銀行は信用できるか」(講談社新書)は日銀による金融政策の問題を正面から取り上げたスリリングな本だ。

本書で岩田は日本銀行はどんな銀行なのか?という基本から始まって、日銀がどのような人たちによって構成され、日銀の政策が誰によって、どのように決定されているかの、そして、日銀がこれまでどのような金融政策を実施し、どのような効果がもたらされたのかなどをデータに基づき、しかもわかりやすく詳細に検討している。

例えば、金融危機以降、各国政府が金融の大幅な量的緩和策を実施する中、日銀の対応はどうだったのか?2008年9月から2009年5月までのアメリカ(FRB)、イギリス(中央銀行)、日本(日銀)の資産増加率(市場への貨幣供給量の増加率)を見てみると、米、英はそれぞれ2.4倍、1.9倍と倍増させているのに対し、日銀は、なんと2%の増加に過ぎない。他国と比べ、日本はもともと低金利を継続させていたので、量的緩和の余地が少なかったとは言え、FRBの「ゼロ金利でもやることは沢山ある」という態度と、日銀の「できるだけ早くゼロ金利をやめたい」とする態度には大きな開きがある。

日銀が不況・デフレの下にあって積極的なインフレ政策を採用せず、「通貨の価値を守る」政策しか採用しないのにはわけがある。日銀は1998年の新日銀法によって金融政策の目標と手段について、政府からの独立性を与えられているのだが、その法の中で日銀に与えられた目的は「物価の安定」と「信用秩序の維持」なのである。ここにはアメリカのFRBが課せられた「最大の雇用の確保」という項目がない。

インフレ率(デフレ率)と失業率の間に相関があることはフィリップス曲線としてよく知られている。日本の場合、デフレがわずかに進行するだけで、大きく失業率が上がるという関係がある。しかし、雇用の確保を義務付けられていない日銀からすれば、失業率が上昇してでも、インフレを抑制することの方が重要だとする考えがあるのではないだろうか?

岩田規久男は本書の中でインフレ目標の設定を提言する。具体的には政府が2-3%のインフレ目標を設定し、日銀にコミットさせる。これまでインフレ目標政策を導入してきたニュージーランド、オーストラリア、イギリス、カナダ、スウェーデンでは、どの国もこのインフレ目標政策によりインフレ率を一定の範囲に収めつつ、経済成長率を高めることに成功してきた。

このように岩田規久男「日本銀行は信用できるか」は、あまり知られていない、しかし実は最も重要である日銀の金融政策について、とてもわかりやすく説明したスリリングな本だ。同じく岩田規久男 「世界同時不況」(ちくま新書)と合わせて読むと、世界同時不況の全体像と、脱出法、そしてそのための金融政策についての理解が進むものと思われる。




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2009年10月06日

政府は高橋財政の実施を

政府は2010年度の予算編成に関し、歳入不足を補うための赤字国債の発行が不可避になったことを発表した。
赤字国債発行へ=税収減不可避、10年度予算編成−政府方針
政府は5日、2010年度予算編成に関し、歳入不足を補うため、赤字国債を増発する方針を固めた。10年度税収は09年度当初見通しの約46兆円を割り込むのは確実で、政府は40兆円を下回る可能性もあるとみて、不足分は赤字国債で賄わざるを得ないと判断した。

鳩山由紀夫首相は就任前から、一貫して国債増発を否定してきた。しかし、昨年秋からの景気低迷で法人税や所得税などの税収が大きく落ち込み、09年度税 収見通しは下方修正が避けられない情勢。首相は10年度予算編成に当たり、厳しい現実に直面して路線変更を迫られた形だ。
2009年10月6日 時事通信

民主党は選挙戦の最中、国債増発はしないことを約束してきただけに、今回の赤字国債発行は大きな方針転換ともいえる。

しかし、ここでウルトラCの経済政策を考えてみた。

そもそもGDPとは

GDP=消費+投資+政府支出+輸出−輸入 の式で表現される。

現在、不況とデフレにより消費と投資が減少していることが一番の問題である。そこで、本来は政府支出の増大は、景気の底割れを防ぐために必要な措置なのだ。

民主党はこれまで「赤字国債は発行しない」、つまり、政府支出を増大させないことを約束していたのだが、これは、実は経済にとってマイナスだった。小泉政権発足当初、国債発行額を30兆円に制限したことが、2003年まで続く経済の悪化を招いたことは記憶に新しい。それが民主党の政策は政府支出を増大させざるを得ないことがわかった時点で、実は経済にとってプラスである。

つぎに、財源だが、民主党は「政府の無駄を省くこと」により対応すると言っていたのがダメになった。どうやら、民主党の政策に必要とされるほどの無駄は見つからなかったのだろう。そこで赤字国債の発行となるわけだ。

もし、赤字国債を市場で売却したならば、市場金利を高めることになるので経済にとってマイナスである。そこで、この赤字国債を、是非、日銀に引き受けてもらいたい。政府が発行する国債を日銀が引き受けるとどうなるかというと、政府は財政支出を増大させることにより経済の底割れを防ぐことが出来る上に、政府支出分のマネーがそのまま日銀から市場へ供給されることになるから、これは金融の大幅な量的緩和の効果を持つのだ。

つまり、民主党が政策実施に必要とする財源を、国債発行で賄い、これを日銀に引き受けさせたなら、なんと、民主党は期せずして、世界恐慌により混乱する日本経済をデフレから世界最速で脱出させた高橋是清が行ったのと同じ、高橋財政を実施することになるのである。

これには必然的にデフレをインフレに転換させ、経済成長を促してしまうという副作用がある。そう、この副作用こそが、今の不況でデフレの日本経済にとって一番必要とされていることなのだ。

藤井財務大臣は就任演説で「尊敬する人物は高橋是清です」と発言しているので、この高橋財政を是非、実現してもらえないものだろうか?
posted by philnews at 04:49 | Comment(6) | TrackBack(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2009年10月05日

日本のメディアはどう伝えたか


9月26日にフィリピンに上陸した台風16号による被害は国家災害調整委員会(NDCC)の10月4日の発表によると以下のとおり

被災者数 797,404家族 3,899,307人
避難所内避難者数   64,975家族  317,660人
避難所外避難者数 128,800家族 664,748人
避難所数 515
死者数 288人
負傷者数 5人
不明者数 42人

【出典】National Disaster Coordinating Council (NDCC)

現在は、全国515避難所および被災地で、被災者にたいする緊急援助が行われている。

本ブログでは台風上陸以来、一貫して現地メディアやフィリピン政府により伝えられる情報を元にして情報を発信してきたが、ここで、日本のメディアは今回の台風被害をどのように伝えたか?について再び検証してみたい。(各社の第一報の比較記事は台風16号 日本の新聞報道比較

結論から言うと、秀逸だったのは毎日新聞矢野純一記者によって配信される記事だった。毎日新聞は9月27日 20時35分に第一報を配信、28日には被災現場へ入り、その様子を克明に描写している。

フィリピン:川沿いの200軒、濁流に…豪雨で被災の町

【タナイ(フィリピン中部)矢野純一】台風16号による豪雨被害を受けたフィリピンで、最も多い70人の犠牲者が出た中部リサール州タナイ町に28日、 入った。

山あいの盆地にあるタンダンクチョ集落では、中心部を流れる川沿いに並んでいた200軒ほどの家が濁流にのみ込まれ、幅100メートルにわたって 折れたココナツやバナナの幹だけが残っていた。

国軍などが捜索活動に当たっているが、依然20人以上が行方不明になっている。(後略)


毎日新聞の記事は、現地の客観的な状況と、被災者の心境、それに洪水で家を流され、家族を失ったときの様子が、まるで映像化されているかのように浮かび上がる描写となっている。


また読売新聞も9月27日21時37分 に第一報を配信、9月29日には稲垣収一記者が被災地を訪ね台風被害と不法居住の問題をリンクさせて論じる記事を配信した。

不法居住を台風直撃、比の死者・不明280人超

【マニラ=稲垣収一】フィリピン・ルソン島を直撃した台風16号による豪雨災害は、29日の政府発表で死者・行方不明者数が280人以上に膨れ上がり、マニラ首都圏に記録的被害をもたらした。

犠牲者には、川沿いに不法居住する貧困層が多く、首都圏が抱える問題を浮き彫りにした。

「今も信じられない」──マニラ首都圏ケソン市で、12人家族のうち弟(30)ら5人を失ったアンドリアナ・トアンさん(33)は泣きはらしていた。(後略)


今回の台風16号によりもたらされた大洪水では、読売新聞が伝えるとおり、川沿いに住むスクウォッターに大きな被害が出た。また、記事にもあるとおり、「政府は住宅を提供して移住させる方針を打ち出しているが、住民の反対も根強く、対策は追いつかない。」というのも事実である。実際、マニラの洪水対策については、日本政府も力を入れてきた分野であり、今回被害の大きかったマリキナ川の洪水対策などもその一つだった。しかし、その度に、住民を組織化したNGOによる反対運動にあい、毎回工事が大幅に遅延してきた。

ちなみに、記事では「不法居住」と明記してあるが、実のところ、居住が「不法」であるかどうかは疑わしい。なぜなら、フィリピンには「公用地への居住」を禁止する法律がないのである。正確には1997年に共和国法8368号により、それまで公用地の占拠を禁止していたマルコス時代の大統領令772号を廃棄し、無効化させたのである。だから、現在マニラの人口の3割を占めるといわれるスクウォッターは法律に違反しておらず、選挙権をもち、様々な行政サービスも一般住民と同じく受けている。

以上、今回の台風16号の被害について比較的扱いの大きかった毎日新聞と読売新聞について見てきたが、それ以外のメディアについては、特に見るべきところはない。それくらいに扱いが小さかったのだ。

フィリピンにとって日本は、アメリカに次ぐ貿易相手国でもあり、シェアで見て約15%を占める非常に大きな存在なのだが、日本から見れば、18番目。シェアで見ると輸出額の1.3%を占めるに過ぎない。この違いがメディアでの扱いの小ささに現れたのではないかとも考えられる。
posted by philnews at 21:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | フィリピン台風・洪水 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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