左翼政党「バヤン・ムナ」のサトゥル・オカンポ下院議員(Satur Ocampo)と左翼女性政党「ガブリエラ」のリザ・マザ下院議員(Liza Maza)が2010年の総選挙で、マニュエル・“マニー”・ビリヤール上院議員(大統領候補)の所属するナショナリスタ党(Nacionalista Party)から上院議員候補として立候補することを明らかにした。

左 マザ下院議員 右 オカンポ下院議員 Photo by bikoy
バヤン・ムナとガブリエラは共にフィリピン共産党系の政党で、新人民軍ともつながりのある戦闘的左翼政党である。
ナショナリスタ党のマニー・ビリヤール候補はNPCのローレン・レガルダ上院議員を副大統領候補として大統領選に臨むが、同時に行われる上院議員選挙の党公認候補としてバヤン・ムナおよびガブリエラと組むことを発表した。

ローレン・レガルダ上院議員とマニー・ビリヤール上院議員
以前の記事(マニュエル・マニー・ビリヤール候補 )で報告したように、マニー・ビリヤール候補は住宅開発業で財を成した、国会議員で一番多くの資産を抱えた「ビジネス界の巨人」であり、実力による国家転覆も辞さない共産党系の候補と組むことは異例と言える。
同時に、マニー・ビリヤール候補は先日、マルコス大統領の息子であり、後継者であるKilusang Bagong Lipunan(KBL:新社会運動)のフェルディナンド・“ボンボン”・マルコス下院議員(北イロコス州代表)とも連携を組み、マルコス候補もナショナリスタ党の上院議員候補として公認された。
フィリピン共産党はマルコス独裁政権時代、最も激しくマルコス政権と対峙した戦闘的勢力であり、それが今回、大富豪であるビリヤール候補を挟んで同一政党から立候補することも異様である。

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ビリヤール候補は「どうして私達が左翼連合(Makabayan)と組むのかわからないようならば、あなたにはナショナリスタ党が何のために戦っているのかも理解できないだろう」と語った。
一方、左翼政党のオカンポ候補とマザ候補は連携の理由について「それはヴィリヤール候補とレガルダ候補が政府と社会の有意義な改革のためには、先進的勢力とも協働する準備があるからである」と語った。
フィリピンの国会では政党があまり意味を持たないことについては「フィリピンの国会」で論じたものの、ナショナリスタ党(ビラール候補)は中道右派、NPC(レガルダ候補)は中道、KBL(マルコス候補)は右派、そしてバヤン・ムナ(オカンポ候補)とガブリエラ(マザ候補)は左派と分類される政党であり、それらがみなナショナリスタ党から立候補するというのも、不思議な話だ。
しかし、世論調査において、ビリヤール候補はノイノイ・アキノ候補に次ぐ支持率を得ており、左翼連合(Makabayan)は政党リスト選挙で常に大きな得票を得る勢力である。これまでなら中道左派・自由党(Liberal Party)のアキノ候補をすんなりと支持していたはずのインテリ層の中にも左派政党支持者は多いことから、今後、アキノ候補とビリヤール候補の支持率が縮まる可能性も見えてきたかもしれない。
【参考】Militant solons to run for senator under NP