藤井財務大臣の辞任によって注目されていた後任人事が菅直人副総理に決まった。菅直人副総理は、鳩山首相、岡田外相、前原国交相、小沢幹事長らと並んで、民主党代表を務めたことのある党の要職者であるだけに、これまで「副総理」「国家戦略担当大臣」「経済財政政策担当大臣」「科学技術政策担当大臣」と肩書きだけ多く、権限のないポジションにいたことのほうが釣り合っていなかったとも言える。
菅直人財務相
そして今回菅直人氏が就任する財務相のポジションだが、財務大臣は予算作成の権限をもつので、昔から首相に次いで力を持つ、実質、国のナンバー2のポジションであると言われている(もちろん手続きとしては閣議決定や国会での承認等のプロセスを経る)。
なおかつ、現在の日本は「失われた10年」がはや「失われた20年」となり、さらには「失われた30年」が始まろうさえとしている長期間のデフレ・不況の中にあり、政府の経済政策しだいで今後、成長軌道への復帰も可能ならば、それこそ抜け出せぬ不況から財政破綻への転落もありうる極めて重要な局面だ。
そこで、菅直人新財務大臣の経済政策へのスタンスを確認しておきたい。
菅直人の経済観
以下は、菅直人新財務大臣が日本経済についてどのような見識を持っているかを最も端的に示した文章である。菅直人氏の公式サイトから転載したものなので、信憑性は抜群だろう。
経済における第三の道
最近経済における「第三の道」を考えている。
つまり60年代の日本の高度成長はなぜ可能だったのか。そして80年代後半のバブル崩壊以降なぜ日本は長期の経済低迷に陥ったのか。さらに、2000年代に入り進められた規制緩和など市場万能主義の小泉・竹中路線がなぜ失敗したのか。
端的に言えば80年代以降、投資効果に低い公共事業に巨額の財政をつぎ込んだのが経済の低迷の原因。小泉・竹中路線は、リストラなどによる各企業の競争力の強化が社会全体の生産性向上になると考えたが失業を増加させ、社会全体としての経済成長につながらなかったのが失敗の原因。それでは過去の失敗を繰り返さない経済運営における「第三の道」は何か。現在、深く考慮中。
2009年11月22日 17:28
筆者の考えでは、80年代後半のバブル崩壊以降の日本経済の長期低迷は「
日本経済 過去20年の推移」で論じたように、橋本政権による不況下での緊縮財政と増税、そして小泉政権での緊縮財政が経済回復の腰を折り、さらには日銀が十分な金融緩和を行うことなくデフレを継続させたことが原因というものだから、菅直人氏の見解とは「正反対」になる。公共事業は、投資効果(乗数効果)が低かったとしても、持続的な経済成長へ貢献しないだけで、それが「経済の低迷の原因」とはなりえない。もちろん、新たな投資を呼び込むような公共事業を選定・実施できるのならば、それに越したことはないのだが。
また、小泉・竹中路線による「構造改革」は、本来、中期・長期での供給能力を向上させることを目的としたものであって、それはそれで長期的な経済成長のためには必要なものである。但し問題は、小泉・竹中路線がその構造改革をデフレ・不況下に、短期的な経済対策をなおざりにしたまま行ったことであって、そのため日本経済はデフレから脱出することなく、失業者も増加、実質成長しても名目GDPは成長しないという異常な経済状態に置かれていたわけだ。
また、菅直人氏の分析の中からは、金融政策の側面がすっぽり抜けている。しかし、本来、バブル崩壊以降の日本経済の長期低迷から導き出されるべき答えは「まずはデフレからの脱出」であるべきなのだ。
菅直人プロフィール菅直人財務相への期待
但し、 筆者は菅直人氏の財務相就任を批判しているわけではない。むしろ、大歓迎である。なぜなら、例えば藤井財務相の後任人事として名前の挙がっていた仙谷 由人行政刷新大臣はこのデフレ・不況の中、増税の方針を明確に打ち出していた。
仙谷行政刷新相は6日、東京都内での講演で、今年末までに決める2011年度税制改正で、消費税率引き上げを含む税制の抜本改革を実施すべきだとの考えを表明した。仙谷氏は11年度予算の財源確保について「消費税はもちろん、法人税も所得税も新しい発想で臨まなければ(11年度)予算編成が出来ない可能性もある」 と指摘した。「人口減少、超高齢化社会の中で、現役世代に大きな負担をかける仕組みはもたない。消費税を20%にしても追いつかない」とも述べ、増大する 社会保障費の財源を確保するためには、消費税率の大幅引き上げもやむを得ないとの見方を示した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100106-00001048-yom-pol
不況下で財政再建を目指し大増税を行えば、日本経済が終了することは目に見えている。つまり、新財務相候補者の中で、仙谷行政刷新相が財務大臣とならなかったことだけでも喜ばなければいけない。
もちろん、菅直人氏の経済政策自体が「現在、深く考慮中」であるため、まだ、どのような経済政策が打ち出されるのかわからないという状況であるから、手放しで喜ぶことも、批判することもできない。
しかし、勝間和代氏との会見を受けて、その数日後には政府がデフレ宣言を行うなど、他人の意見に耳を傾ける姿勢がありそうだ。菅直人氏は市民運動出身であり、なおかつ理学部出身なので、市民の生活状況を改善し、論理的に物事を理解することが期待できるのではないだろうか?
もちろん「デフレ脱出」を第一の目標とし、1.効果の期待できる公共事業の実施、2.デフレ克服のためのインフレターゲットを伴う金融量的緩和、3.低所得者を救済し、社会に安心をもたらす給付つき税額控除の導入に向けて政策を立案していただければ文句なしなのだが・・・
【関連】http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/343076/
posted by philnews at 07:31
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