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フィリピン英会話ネット
2010年06月04日

フィリピン大統領が辞任しない理由

鳩山由紀夫首相が辞任した。在任期間にして262日、極めて短命政権だった。このところ、日本では小泉首相以降は安倍、福田、麻生、そして鳩山と短命政権が続いているが、フィリピンでは一度大統領に就任すると任期が終わるまで決して辞任することは無い。それどころか、憲法上の規定に基づけば大統領ではありえない人物が大統領を務めたり、中央選管と結託して票の不正操作をしてでも大統領であり続けようとするありさまだ。今回の鳩山首相の辞任によって、アロヨ「大統領」が在任していたこの9年間に日本の首相は6人も存在したことになる。

フィリピン大統領が辞任しない理由


フィリピン大統領が辞任しない理由として一番大きいのは、大統領の利権の大きさだろう。フィリピンの場合、大統領には行政統括権のほか、国軍統帥権、戒厳令発動権、条約締結権、海外からの借款の締結権、予算案を含む法案の拒否権、上級公務員の任命権などあらゆる権力が集中するが、その中でも大統領にとって一番魅力的なのは「金」を左右する権力である。

例えば、フィリピンでは下院議員一人当たり年間7000万ペソ(1億4000万円)、上院議員は2億ペソ(4億円)がPriority Development Assistance Fund (PDAF:優先開発支援資金:通称ポークバレル)として分配される。この年間7000万ペソのお金を議員の裁量で使えることがフィリピンの国会議員の多くにとっての一番の魅力なのだが(執行額の半額が議員のポケットに入るといわれている)、このポークバレル、執行するためには大統領の署名が必要となる。野党に所属し、大統領に嫌われると、国会議員の権力の源泉ともいえるこのポークバレルが執行できなくなる。これがフィリピンの国会議員は常に大統領の与党に乗り換える理由であり、国会議員が大統領に反対しない最大の理由である。フィリピンの大統領はポークバレル分配の権限を握ることにより議会を抑えているのだ(そのため、エストラーダ大統領も、アロヨ大統領も憲法に定めた「国会による」弾劾手続きにより罷免されることがなかった)。

このように本来、予算の作成を行う国会を抑えているので、大統領は憲法で定められた拒否権以上の権力(影響力)を予算案に対しても持つことになる。国家予算の規模は年間1.5兆ペソ(3兆円)だが、この使い道について、国会議員は大統領の意向には逆らわない。もちろん、予算案に限らず、どのような法律に関しても、国会議員は大統領の意向を無視しないだろう。

国家予算以外も大統領の財布


また、大統領のもつ人事権・任命権も金に結びつき、大統領にとって強力な武器となる。人事権は各省庁の大臣・上級公務員レベルだけでなく、政府関係機関の長も任命できるもので、例えばその中にフィリピン宝くじ協会(PCSO)も含まれる。PSCOの売上げは年間500億円程度あるのだが、このうち15%が運営経費、55%が当選金として払い戻され、残りの30%がチャリティー基金として用いられることになっている。つまり、年間150億円がチャリティー基金として様々な目的で使われるわけだが、大統領はこのお金の使い道についても強い影響力を持つことになるのだ。エストラーダ大統領は違法賭博フエテンの上がりをポケットに入れていたことで退陣に追いやられたが、なにも、違法賭博の総元締めでなくとも、公的な賭博の総元締めになれるのである。

philippine president supporting rate.gif
フィリピン歴代政権支持率推移

このように大統領であるだけで、強大な権力・金が手に入るので、フィリピン大統領は支持率がどれだけ低下しても決して辞任などしないのである。

【参考】President controls pork barrel - DBM official
posted by philnews at 03:21 | Comment(5) | TrackBack(0) | フィリピン大統領選挙 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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