GDP一単位当たりのエネルギー消費量という指標がある。数式にすると
エネルギー消費量 / GDP だ。
これは「どれだけエネルギーを効率的に用いているか」を示している。
その数値が下のグラフだ。
主要国のGDP当たりのエネルギー量
これを見るとわかる通り、先進国中日本は圧倒的に数値が小さい。つまり、少ないエネルギーで効率よくGDP(商品とサービス)を生み出しているのだ。その効率の良さと言ったら、カナダの3.5倍、アメリカの2.5倍である。
これは、日本がオイルショック以降、徹底的に省エネを進めた結果である。倒産してしまったGMが生産する車と、日本製の車の燃費を比べてみれば、日本がどれほど努力したかがわかる。
次のグラフは経済成長とエネルギー消費量の関係だ。
経済成長とエネルギー消費量の関係
イメージ的には環境先進国と思える北欧諸国は、一人当たりエネルギー消費量が日本の1.5倍を超えている。一人一人が日本よりもずっとふんだんにエネルギーを消費し、ガスを排出しているのだ。
これら2つのグラフからわかることは、実は日本が環境先進国であるということだ。そのため、日本にはもう、エネルギー消費=温暖化ガス排出を抑えるような無駄な部分はほとんど残っていない。
それに対して、昨日の首相の記者会見はといえば05年比15%減(90年比8%減)を目標とするもの。
「この目標はヨーロッパの05年比13%減、米国の14%減を上回る。欧米は外国からお金で買ってきたぶんを加算しているが、日本は省エネなどの努力を積み上げたいわば「真水」の目標。日本だけが不利にならないよう国際交渉に全力で取り組む。」(首相会見要旨 朝日)
上で述べた通り、他国と違い日本には省エネの余地はない。そうしたときのために外国(途上国)の排出ガスを削減してそれを先進国の排出削減分として計算しても良いというルールがある。それを真っ向から否定しているのだ。
そして「途上国は「先進国の責任だ」と言うだけでなく、自らも行動を起こすべきだ。日本は技術支援を惜しまない。革新技術や原子力の開発・普及に全力を挙げ、今回の中期目標達成で、30年には約4分の1減、50年には約7割減につながるとの分析がある。 」(首相会見要旨 朝日)
ここでとうとう本音が出たようだ。途上国での「原子力開発」これである。
そもそも原子力発電所の管理・運営は先進国でさえ難しく、度重なる事故を起こしている。それを、途上国へ輸出しようというのだから、環境の保全どころか、地球の破滅を招くのではないか。
実は、フィリピンでも原発再開の動きがある。フィリピンの原子力発電所はマルコス政権時代にバターンに建設されたのだが、稼動させる寸前に止められ、現在まで放置してある。これを再開する計画が具体的に進んでいるのだ。
フィリピンを見ていると感じるのだが、途上国はものすごく無駄なエネルギーを使い、また、ガスを排出をしている。良く整備されていないバスやジプニーから吐き出されるあの黒煙。効率の悪い機械で生産している地元企業、職場での無駄遣いの数々。これらを改めれば、エネルギー消費量も、温暖化ガス排出量も相当に減らせるだろうと考える。
日本は省エネと公害防止を成し遂げた環境先進国として、世界にそのノウハウを援助・輸出すれば良いのではないだろうか?