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フィリピン英会話ネット
2009年06月26日

従軍慰安婦問題と人身売買


メディアやネット上では従軍慰安婦問題が話題に上ることがあり、それがあった、なかった、あったとしても実態はメディアで伝えられているような内容のものではなかったなど、様々な論陣が張られている。

仮に、実態がメディアで伝えられているようなことがなかったとしよう。しかし、日本は1993年の河野談話、翌94年の村山談話によって慰安婦の存在を正式に認め、元慰安婦に対する謝罪を表明。これにより、外交上は「メディアが伝えるような実態があった」となったのだ。

その後は、1995年のアジア女性基金の設立と償い金の支払いが行われる一方、2007年にアメリカ議会で日本に正式な謝罪を要求する決議を皮切りに、同様な決議がオーストラリア、オランダ、カナダでも出されたのは記憶に新しいところだ。

つまり、従軍慰安婦問題は、外交上はすでに歴史的事実とされている。

ただし、これは歴史の話である。政治の問題として直接今の世代に降りかかっていることであるにしろ、過去に行われたことを「あった」「なかった」と議論しているのだ。それに対して人身売買の問題は、今の問題である。

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6月24日の東京新聞に「増える比女性の人身売買 『地獄だった』性的関係を強要 3000ドルで“転売”」と題する記事が掲載された。これによると、フィリピンから中東やマレーシアへ働きに行った女性が、募集時の条件とは大きく異なる仕事をさせられ、さらには性的関係まで強要されたという酷い話が紹介されている。これは定義からして明らかな人身売買だろう。

人身売買は日本にとっても他人事ではない。

2004年、アメリカ国務省は日本を人身売買の要監視国とする報告書を発表した。その年の人権報告書では「日本国内への女性や少女の人身売買が問題となった。主としてタイ、フィリピン、および東欧諸国の女性や少女が、性的搾取および強制労働を目的に、日本国内へ売買された。」とし、とりわけフィリピンからのエンターティナーについて「日本へ人身売買された女性(特にフィリピン人女性)は、興行ビザで合法的に入国していた。(中略)日本へ人身売買された女性は、通常、性風俗サービスを提供する許可を得た事業で、強制的に売春婦として働かされていた」と記述されていた。

この報告書を受け、2005年、日本政府は省令を改正し、フィリピンからのエンターティナーの受け入れを厳格化、実質中止した。なぜなら、報告書を読むと、フィリピンからのエンターティナーは人身売買の被害者に該当するとあるのだから、当然の措置だろう。この改正を受け、同年の人身売買報告書では「日本政府は、毎年多数のフィリピン人女性を日本で奴隷状態にするために人身売買業者が利用するフィリピン人女性への興行ビザ発給を厳格に行うという大改革を行った。」と評価され、要監視国リストから抜けている。

一見、めでたしめでたしだ。しかし、そもそも、事実認識に誤りがあった場合はどうだろう?そして、この政策変更によって何が現実に起きただろう?

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先日論じたように、日本がフィリピン人の受け入れを中止したことにより、経済的には年間400億円が失われた。しかし、ことはこれだけでは済まなかった。それまで日本へ行くために待機していた女性たち(予備軍も含めると20万人はいたと推計される)は、日本が受け入れを中止したため、多くが韓国、シンガポール、マレーシア、そして中東へと行き先を変えたのだ。そこに待っていたのは昨日紹介した記事にある通りである。

つまり、日本の受け入れ中止により、本当の人身売買被害者が増加したのだ。

そもそも人権報告書ならびに人身売買報告書で述べられた内容が誤りなのである。日本へ来るエンターティナーが「通常、性風俗サービスを提供する許可を得た事業で、強制的に売春婦として働かされていた」ことはない。日本へやってきたエンターティナーは通常、売買春に従事することなく、フィリピンでは稼げない額を手に入れていたのが現実である。報告書の記述自体が「日本で働くフィリピン女性=売春婦」という根強い偏見に基づくとともに強化する差別的なものでさえある。

おかしなことに、この報告書の作成にあたって用いられたデータというのが「NGOおよびその他の信頼性のある情報源によると」としか書かれていない。つまり、これだけのネガティブ・インパクトをもたらす政策変更を行う根拠となる報告書(勧告)を作成するにあたって、本当の実態調査なんて行われていなかったのだ。

この政策変更によって起きたことは、まず、年間8万人のフィリピン人女性が日本という恵まれた働き口を失い、年額400億円の収入機会を失った。そして、彼女たちは、別の受け入れ先として韓国、シンガポール、マレーシア、中東などを選び、本当の人身売買の被害者となった。中には収入を得るために、フィリピン国内で売買春に従事せざるを得なくなったものも多数いる。

つまり、東京新聞の記事で述べられていた「人身売買が増加」というのは、日本の政策変更こそがもたらしたのである。

根拠希薄なデータによって、報告書が作成され、政策変更が行われた。それにより、当事者である大多数のフィリピン人女性は「本当の人身売買の被害者」になってしまったのだ。NGOも、アメリカ政府も、そして日本政府も、当事者のことなんて考えていないのである。NGOは自分たちの思想を実現するために、アメリカ政府は日本政府への外圧の道具として、そして日本政府はその圧力から身を守るために、行ったのである。

しかし、ことはこれだけでは済まない。

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日本は人身売買報告書に述べられている記述を「事実」と認定し、政策変更を行ったわけだから、これは外交上の「事実認定」となる。つまり、日本は、20年間に渡って人身売買を行ってきた国であると国際的に認めてしまったのだ。その間、フィリピン人の被害者だけでも100万人はいたことになるだろう。

からくりは、従軍慰安婦問題と同じである。それが事実か、どうかに関わらず、日本政府は認めてしまった。

そして、これは歴史の問題ではない。ほんのこのあいだ、2005年に起きたことだ。そして、その本当の被害者は、今現在もこれまで以上の困難に直面している、現在進行形の話である。

こうして、目の前で事実が捏造されている。そして、検証不能になったころ、それは歴史的事実として記録されるのである。そのころになって「日本は謝罪し、補償金を支払うべきだ」と言われたら、もう、誰も反論できないのである。日本は従軍慰安婦とされた人たちに支払った200万円を、今度はフィリピンからのエンターティナー100万人へ支払う覚悟があったのか(総額2兆円)?その時になって「そんな事実はありませんでした」では手遅れなのだ。

ネット上で「従軍慰安婦問題はなかった」と声高に叫ぶ者は多いが、この問題に関心を寄せる人はほとんどいない。目の前で行われた捏造なのにだ。日本は歴史から何を学んだのだろう?
posted by philnews at 18:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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