政権与党が変わったところで、この仕組みは変わらない。誰でも恣意的に逮捕できる法律さえあれば、どこが政権をとっても、その施政者に都合が良いことに変わりはないからだ。
人身売買の被害者を救済する目的で2005年に行われた法務省の省令改正が逆に本当の人身売買被害者を増加させたということは前回「従軍慰安婦問題と人身売買」で論じた。あのときも、女性の権利保護を掲げたNGOとアメリカおよび日本政府が結託する形で行われた政策変更だった。その際、客観的データの検証は行われていなかった。
今回の児童ポルノ法改正も、客観的データの検証は一切なく、ユニセフ協会という「良心的団体」のアグネス・チャンという外国人が感情論だけを振りかざし「海外では」という外圧を用いて、メディア戦略と国会に対するロビー活動を行った。構造は同じである。
政府と「良心的団体」が結託し、国民の自由を奪う法案を成立させる。こうした状態をファシズムと呼べば「何を昔の話を」とか「心配しすぎ」だと思う人が大半だろう。しかし、ファシズムとはそもそも、施政者が一方的に国民を抑圧するものではない。国民の圧倒的支持に基づいて成立し、一方で国民の自由を奪い、監視の下に置いて、全体として抑圧するものだ。
歴史の教科書に書いてある出来事を記憶する人は多くても、今、目の前で起きていることがそれと同じことなのだと気づく人はあまりにも少ない。