生産力はGDPで表現される。GDP(国内総生産)とは「一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額」であり、普通、1年間に国内で生み出された付加価値の合計だ。これを人口で割れば一人当たりGDPが出る。
世界銀行の発表によれば、2008年のフィリピンの一人当たりGDPは1,847.40ドル。一方日本の一人当たりGDPは38,442.59ドルだった。つまり、日本人は、フィリピン人の20倍も生産性があるということになる。物価を考慮した購買力平価でみた一人当たりGDPはフィリピンが3,509.87ドル、日本が34,098.78ドルだから、それでも10倍近い開きがある。
もちろんこれには資本、技術、ノウハウ、インフラなど様々な要因があるのだが、それと同時に「労働力の質」が占める要因が大きい。
先日「フィリピン就労日記」の「日系企業とローカル企業」の記事を読ませていただいた。ここにはフィリピンの労働力の質が見事に描かれていた。私はこれを読んで、驚き、怒り、笑い、そして、最後には恐怖さえ感じた。
「労働力の質」とは必ずしも「フィリピン人」のポテンシャルを示しているわけではない。同じ人が、フィリピンで働いているときにはブログにあるような働きぶりなのに、一旦、海外へ出て働くと一日16時間労働も厭わない優秀な労働者へと変身するというのもよく知られている。それがフィリピンが海外へ出稼ぎ労働者を800万人以上送り出せている理由でもある。
つまり、個人の資質だけでなく、フィリピンという社会が個人のもつポテンシャルを台無しにしてしまっている部分が大きいのだろう。とても優秀な人でも、フィリピンで仕事をしたら、銀行へ行くだけで半日つぶれて、アポをとって会いにいったら相手がいない、申請した書類は相手先でいつまでも放置されたままという状況に置かれるのだから、これで「生産性を上げろ」というほうが無理である。
生産性は桶に入れた水の水位みたいなものだから、桶を囲う木片の一片でも低ければ、全体としての生産性はそこまでしか上がらない。
フィリピンの貧困を「奪われたから貧しい」と考えると「奪い返すこと」が正しい戦略となってしまう。その結果、人々の意識と行動は「生産性を高めること」へと向かわない。案外、フィリピンの貧困を構造的搾取で説明する人こそ、この国を貧しいまま置きとどめることに荷担していることを自覚すべきかもしれない。

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