日本のGDPが5四半期ぶりにプラスに転じたということだ。4-6月期の実質GDP成長率(季節調整済み)で前期比0.9%増、年率換算で3.7%増となった。
今回のGDPの回復は輸出の回復、定額給付金、新車購入補助金、そして公共投資(政府支出)の増大が効果をあらわしたといえる。但し、景気を回復軌道に乗せ、経済を持続的に成長させるためには、それを可能とする政策が必要とされる。
本来、景気を良くして、不況から脱出するのはそう難しいことではない。以前にも書いたがGDPとは
GDP = 消費 + 投資 + 政府支出 + 輸出 - 輸入
だ。
まず、消費と投資(と輸出)の落ち込みによりGDPがマイナスになっているのだから、これを政府支出で補うこと。
そして、消費・投資を回復させるためには、金融緩和を行い、マネーが市場に出回るようにすること。
とりあえず、必要なのはこれだけである。
今回の政府による財政支出は補正予算15兆円という規模であり、これがGDPに計上されること、そしてそのうち3700億円の自動車補助金は、自動車の買い替えを促し、消費刺激に成功した。規模が十分であるかどうかという議論はあるが、基本的方向は正しい。
但し、財源を国債で賄っているので、市場からはその分だけのマネーが、一旦、吸い上げられたことになる(支出された段階で市場に戻るが、マネーの供給量はプラスマイナスゼロ)。これでは市場金利を高める要因となるので、財政政策を発動すると同時に、日銀による金融緩和(市場へのマネーの供給)が発動される必要がある。政府が市場で売却した国債を、日銀が市場から購入すればベストだ。
また、前回も論じたように、人々が長期的な不況やデフレを予測している場合には、新たな投資や消費を喚起することができないから、将来のインフレを予測してもらう必要がある。そのために、インフレが起こるまで、日本銀行は金融緩和を持続することを約束する必要がある。これをリフレ政策という。
以上のように、大雑把には 財政出動+金融緩和 に 将来のインフレ期待を合わせれば、景気は回復するだろう。非常に簡単な話なのだが、日本はバブル崩壊後の「失われた10年」、そして今回の世界同時不況の中、この政策を採用していない。財政出動も、金融緩和もあまりにも規模が小さく、持続的な経済成長を促すことには程遠いものだった。
これから何回かにわたり、日本の経済政策について論じてみたい。
【参考】岩田規久男「世界同時不況」 (ちくま新書)
GDP成長率 年率換算3.7%増 5四半期ぶりプラス(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090817-00000003-maip-bus_all

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