総務省の発表によると、日本の失業率は7月も引き続き悪化し、5.7%となった。これは6月の5.4%と比べ、0.3ポイントの悪化であると同時に、戦後最悪・過去最高の失業率となった。7月の就業者数は6270万人と18ヶ月連続の減少で、1年前に比べ136万人減少となった。また、7月の完全失業者数は359万人と1年前に比べ103万人増加、これは9か月連続の増加である。
なお、完全失業率は男性6.1%、女性5.1%と男性の方が高く、また、年齢別では15-24歳で9.9%、25-34歳で7.1%、45-54歳で4.0%となっており、若年層ほど失業率が高い。
雇用者数は前年同月比で製造業が約10%減少した一方で、医療・福祉分野では約5%の増加が見られた。これは、製造業等での失業者が、介護・福祉の分野へ転職したことを示している。
厚生労働省による完全失業率の定義は以下の3つの条件を全て満たしたものとされている;
@仕事がなくて調査週間中に少しも仕事をしなかった
A仕事があればすぐ就くことができる
B調査週間中に,仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた
調査期間中に1日でもアルバイトをしたものは完全失業者には含まれない。また、仕事がなくても、求職活動をしていないものは「無職」ではあっても、失業者とはカウントされていない。完全失業率にカウントされるのは「求職者」であることが条件なのだ。
つまり、あまりにも労働市場が厳しく、就業をあきらめてしまった「無職者」はこの完全失業率の数字にはカウントされないので、実際の「失業率」または「無職率」は公表される完全失業率の1.5倍程度にはなると考えられる。もちろん、これらの数字の中に学生(就学者)は最初から含まれていない。
以上のことを考えると、若年層の完全失業率が異常なほどに高いことがわかる。15-24歳の9.9%は高校と大学の新卒者が含まれる年齢層だし、25-34歳は「失われた10年」により就職がかなわなかったロスト・ジェネレーションだ。ちなみに、15-24歳の男に限れば、完全失業率は12%に達する。もちろん、学生もニートも含まずにだ。
新卒の段階で就職できなかったものは正規労働者(正社員)として雇用されることが難しい日本社会で、すでに若年層の完全失業者がこれだけ存在することの問題は、どれだけ強調しても、強調しすぎにはあたらない。少子化も問題ではあるが、それ以前に、今生きている若い世代が、そして10-20年後には確実に日本の中心的な労働力として日本を支えなくてはならない世代が、今、「求職しても職がなく、週に1日の仕事もなかった、完全失業者」なのだ。こんな状態で結婚し、子供を産み、育てることなど想像すらできないだろう。
今の日本を、そして将来の日本のことを考えるならば、まずは、この若年層に対する雇用対策を徹底して行うことが真っ先にきておかしくない。もちろん、そのためにこそ経済対策が必要なのだが。
【参考】
労働力調査(基本集計) 平成21年7月分(速報)結果(総務省)

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