自民党は2007年7月の参議院選挙ですでに負けていた。安倍内閣の下で行われた選挙では郵政造反組復党問題や年金記録問題、相次ぐ閣僚の不祥事等が噴出していたこともあり、歴史的大敗を喫した。
その後、安倍、福田、そして麻生と、選挙(=国民の審判)を経ずに首相が毎年変わった。この間、秋葉原の通り魔事件に象徴された格差問題は解決されず、景気の回復が実感されることもなく、さらには2008年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機の発生で、日本はますます状況を悪化させていった。
こうした、自民党政権の下、一向に良くなる兆しが見えない日本というのを基底として、マスコミによる執拗な自民党・歴代首相バッシングが盛んに行われた。安倍、福田が1年で早々と退任してしまったのもこうしたマスコミによるバッシングが原因の一つだろうし、麻生首相に至っては「漢字が読めない」だの「高級店で食事をしている」だの、政治家を評価する基準とはなりえない理由でのバッシングが続いた。
ここに面白い調査データがある。教育情報サイトが小中学生を対象にインターネットで行った意識調査だ。
小中学生も民主党を支持!? 意識調査で明らかに
「投票権があった場合、投票したい政党は」という質問に対して最も多くの票を集めたのは民主党で38%となりました。続いて自民党が23%、社民党8%、公明党3%、国民新党1%、共産党1%という結果になったという。
一方、実際の第45回衆議院議員選挙での比例代表の各党得票率を見てみると
民主党42.4% 自民党26.7% 公明党11.4% 社民党4.2% となる。
驚くほど一致している(実際の選挙での公明党の得票率の高さの理由はみなさんご存知の通り)。
これは何を意味しているかというと、マスコミの影響力だ。小中学生は各政党の主張を冷静に分析したり、マニフェストを読んだりはしない。普段接しているテレビから流れてくる断片的な情報をイメージ化し、自分の好きな政党を選んでいると考えられる。その結果が民主党38%、自民党23%、社民党8%という結果だ。そして、この結果は、20歳以上の有権者が投票した実際の各党の得票率とほとんどかわらない。
つまり、実際の選挙もマスコミ主導選挙だったことの証明だ。
「構造改革なくして景気回復なし」をスローガンとして登場した小泉政権は、国民とマスコミの熱狂的な支持に支えられながら、不況下での財政緊縮を断行し、デフレを容認、無数の企業の倒産を黙認し、行政機構の統廃合を行うとともに、現在の格差社会の基礎を作った。
あの熱狂的な支持も今となってはどこへ行ったのか?小泉チルドレンは今回の選挙でことごとく落選した。
小泉チルドレン再選、65人中3人だけ
前回の「郵政選挙」で小泉旋風に乗って初当選した83人の「小泉チルドレン」。今回はこのうち65人が小選挙区に立候補したが、小選挙区での当選を果たしたのは、鹿児島4区の小里泰弘さん(50)ら3人だけだった。
安倍、福田政権は小泉改革の継承を唱えたもののそれぞれ1年で退任、続く麻生内閣は世界金融危機の発生を機に、小泉改革からの決別を唱え、大規模な財政支出による景気回復を目指した(これは不十分とはいえ、一定の効は奏した)。
つまり、麻生内閣は結果的に小泉内閣の反対をやろうとした内閣だ。
今見ている、つまり、回復の兆しの見えない日本は小泉政権時代につくられたと考えられる。しかし、民主党は、麻生内閣の、またその反対をやろうとしている。行政機構のさらなる見直しと財政緊縮である。つまり、民主党政権は、ひとひねりを経て小泉政権時代の政策に逆戻りしてしまったのだ。それでも、今回の選挙の争点は、景気回復でもなく、格差の是正でもなく、別に子供手当ての是非でもなかった。争点はただひとつ「政権交代」だったのだ。
今、小泉政権を支持したことが間違いだったことに気づいた国民は多い。しかし、その国民はそのまま民主党を支持してしまった。外需の助けを得られない今の状況では、民主党の政策が破綻するのは案外早いかもしれない。
でも、マスコミが手のひらを返したように民主党のバッシングを始めるのは、いつなんだろう?