
photo by counting chest bullets
レポートは、世界経済危機のフィリピン経済および雇用へのインパクトは比較的小さかったと結論づけた。
その要因として、世界経済危機により、輸出産業である製造業部門を中心に100万人近くの失業が発生したものの、パートタイム労働が240万人創出されたこと、同時に、BPO(business process outsourcing :外注産業)部門が発展を続け、雇用の減少を軽減したこと、そして、アロヨ政権により実施された雇用緊急対策としての「包括的生計および緊急雇用プログラム」(Comprehensive Livelihood and Emergency Employment Program :CLEEP)が半年間で20万人以上の雇用を生み出したことなどを挙げている。
特に、BPO部門では世界経済危機による各国のコスト削減努力が逆に、フィリピンへの外注を増加させたことがプラスに働いたようだ。
フィリピンでは近年BPO産業が経済成長を主導している。BPO産業とはコールセンターを中心に、コンピューター・ソフトの開発、アニメの動画作成、企業の会計業務の引き受けなどによって構成される、高速通信技術の発達によって可能となった新しい産業部門のことで、2006年には120の企業が20億ドルの収益と20万人の雇用を創出し、2008年には企業数が400に増加するなど年率数十%のペースで成長を続け、フィリピン経済を牽引している。これにはフィリピン人が英語を標準語として話せることが大きく貢献している。
レポートはフィリピン政府による緊急雇用対策を失業率の低下に貢献したものとして評価する一方、それが短期的対策に過ぎず、長期的な経済成長と生産性の向上に役立つものでなければ、効果も長続きしないことを警告している。レポートが示したように、世界経済危機のフィリピン経済への影響は他国と比べて限定的であったのが事実としても、GDP成長率や輸出・輸入総額は確実に減少しており、フィリピンは、今後も長期的視点に立った経済成長戦略が必要だろう。
【参考】950,000 RP jobs lost due to global crisis―ADB
Asian Development Bank
一番気になるのは、フィリピンの銀行が不良債権を抱えなかったので、経営戦略が絶賛されているようですが、1%で預金を預かって、6%の国債を買っているだけのことを戦略とはほど遠いものがあります。経済が成長しない一つの要因には、銀行が貸与すべきビジネス・個人に貸出していないことと、貸出金利が高すぎることにあると思います。
貴重なご意見ありがとうございます。
フィリピンをGDPや産業構造からだけでなく、金融の側面からも捉えなおすと、かなり違ったものが見えてきそうですね。
例えば、それこそ農村金融などでも、一般の農民が信用を受けられる機会なんてめったにありませんし、せっかく政府が導入した協同組合による信用供与も、農民の返済が滞りすぐにダメになりましたし。
おっしゃるとおり、金融・信用がしっかりしていなければ、経済成長なんてできそうにないですね。