スポンサードリンク
フィリピン英会話ネット
2009年11月16日

フィリピンの男女格差・ジェンダーの問題



世界男女格差報告書


世界経済フォーラム(WEF)による2009年の世界男女格差報告書(Global Gender Gap Report)が発表された。それによるとフィリピンの男女平等度は世界第9位。上位には北欧諸国が並んだ。

世界男女格差報告書は経済参加率と機会、教育達成度、健康と生存、政治的能力の4分野14項目を指数化したものを順位付けしたもので、それによるとフィリピンは経済参加率と機会が11位、教育達成度が1位、健康と生存が1位、政治的能力が19位となっている。

特に注目すべき項目は教育達成度において、小学校から大学までの全期間にわたって女性の就学率が男性の就学率を上回っており世界1位となっていること、そして、より注目されるのは、管理職に占める男女比が男性43%、女性57%と女性の方が上回っていて世界一位、また、専門職に占める男女比も男性37%、女性63%と女性が上回っていて、同じく世界一位ということだろう(注:世界ランクに関しては一定の基準を満たすと一位とされるので、本当にフィリピンが世界で一位というわけでもない)。

一方、北欧と比べて劣っているのは国会議員に占める女性の割合が2割に留まっていること、閣僚に占める女性の割合が1割に過ぎないことなど政治的能力の分野と、労働参加率が女性51%、男性82%と、女性の労働参加率が大幅に小さくなっていることが順位を押し下げている。

世界男女格差報告書ではこうした男女格差と経済競争力との間に相関関係があるという結論を統計的に導こうとしているのだが、グラフを見る限り、いくつかの貧しいイスラム諸国が男女平等度と国際競争力の両者ともに低いこと、そして、北欧諸国が男女平等度と国際競争力が共に高いということがわかるくらいで、男女平等度の高いフィリピンの国際競争力はきわめて低いレベルに留まっている。つまり、男女平等度と国際競争力の間に相関関係があるとする分析はきわめて恣意的だといえる。

2446325904_ded837af51.jpg
photo by counting chest bullets

フィリピンのジェンダー


さて、それにしてもフィリピンの男女平等度は高い。これは事実である。この原因には大きく2つあると考えられる。まず一つ目は、フィリピンがそもそも双系制社会だったことである。双系制社会では子どもは父親と母親双方の資産を男女に関わり無く均等に相続する。そもそもが男だから、女だからという区別が相続の段階にさえ存在しないのである。これは基本的に長男が一人で全財産を相続するものとされた日本のような社会規範と根本的に異なり、ここから派生する社会一般での「男だから」「女だから」という社会観念も異なるものとなったと考えられる。

そして2つ目がより重要なのだが、フィリピンでは男女格差以上に階級格差とでも呼ぶべき経済格差(貧富の差)が大きいことである。

男女格差報告書の中で、フィリピンでは管理職を占める女性の割合が男性よりも高いことが示されているが、では、管理職女性の家では誰が子どもの面倒を見ているのか?誰が家事を行っているのか?これはほぼ間違いなくヤヤやメイドと呼ばれるお手伝いさんであり、そのほとんどが貧しい家庭出身者だと考えて良い。これが日本だと、相当な上流家庭でなければメイドなど雇えない。しかし、フィリピンでは一定以上の中流家庭が普通にヤヤやメイドを雇用しているから、男女に関わり無く育児・家事から免れ、外で働ける。

フィリピンの男女平等の真実


つまり、フィリピンでは貧富の差を利用することにより男女格差を埋めている。それがフィリピンの男女平等の真実だ。

にもかかわらず、欧米を中心とする援助国はフィリピンに対してさえ男女平等を推奨している。例えば、フィリピンでは女性管理職の方が男性管理職よりも多い社会だと述べたが、そのフィリピンでさえ政府機関の一部には管理職登用にあたっての「女性優先ルール」が採用されていたりするのだ。もちろんこれは欧米諸国によって推奨されたものをフィリピンが採用したからだ。

また、援助プロジェクトでも男女格差解消を目的とするものが数多く実施されている。貧しい農村へNGOのスタッフがやってきて、「この村で男女格差解消プロジェクトを実施しましょう」なんていうのは日常茶飯事だ。なぜなら、そうしたNGOは国際機関から男女格差解消(ジェンダー)のための予算を獲得しているからである。

繰り返すが、フィリピンでは貧富の差を活用して男女格差を埋めている。にもかかわらず欧米諸国はフィリピンに貧困解消のための予算でなく、男女格差解消のための予算を配布しているのである。

ある人が抱える困難が、女性であるからなのか、貧困家庭に生まれたからなのか、それともフィリピンに生まれたからなのか。それを考えれば、必要なのは男女格差の解消なのか、貧富の差の解消なのか、国全体の経済発展なのかがわかるだろう。

【参考】World Economic Forum
posted by philnews at 21:11 | Comment(5) | TrackBack(0) | フィリピン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私自身日本でビジネスをしていた経験から、日本のジェンダー問題はかなり深刻だと思います (女性を登用しようとしても女性にその気があまりないことが大きな壁でした) が、おっしゃるように大きな違いは、メイドを簡単に雇えるか否かにつきますね。

双系性社会というポイントは面白いですね。
Posted by max at 2009年11月17日 12:48
日本の場合多くの女性がいまだに「女は結婚したら家庭に入るもの。夫に養ってもらう。」と言う専業主婦の価値観に縛られていることです。
しかし、問題は専業主婦を養うだけの経済力を持った男性が年々減少していることです。
面白いことに若い世代ほど、男性は妻に対して共働きを希望しているのに、女性自身は専業主婦を希望しているのです。
ですからお見合いや婚活などでも、一部のエリートで、専業主婦を養える男性に多くの女性が一点集中しているのが現状です。


Posted by at 2009年11月17日 23:04
maxさん
  さん

そうですね。理論上は「無能な男より、有能な女」が働いた方が生産性は高まるでしょうし、男女共、労働力人口が増えればそれだけ生産高自体は高まるはずなのです。

しかし、フィリピンは男女格差が小さいのに生産性も生産高も低い、そして日本は男女格差が他国より大きいのに生産性も生産高も高い。

世界経済フォーラムが男女格差と経済競争力の相関性を証明しようとしている中で、フィリピンと日本はちょうど反証してしまうような国かもしれません。
Posted by philnews at 2009年11月17日 23:48
この男女平等(ジェンダー・ギャップ)指数を勘違いしてる人がほとんどなのですが、
これは欧米の文化や考え方を基準にしたものなので
アジアには向かないものなんですよ。

どういうことかといいますと、フィリピンでは
男性が怠け者で働かない人が多く
女性は働き者が多いので
「社会進出してる割合が女性のほうが多い」ので「順位が高い」んです。

それと比べて、日本では専業主婦という働いていない人の割合がいまだに4割以上なんです。

これは、世界の基準だと「かわいそう」となるのでしょうが
日本女性の多くは「働きたくない」「むしろ、幸せ」という人が多いわけです。
(もちろん、一部には「働きたいけど(仕事を選んでしまい)働けない」という人もいますが多数派ではありません)

実際に「幸福度」の調査では日本の場合、30代の女性の専業主婦が幸福度1位です。
その反対に40代の男性が一番幸福度は低いです。

「幸福度 男女差」で検索するとわかります。

ここまでいびつな国もないでしょう。
ユダヤ、フェミに支配されたマスコミの洗脳によるところが大きいです。

こういうことを知らないで男女平等(ジェンダー・ギャップ)指数を理由に「もっと女性に権利を!」と
被害者面してるのが一部の醜い日本女性のが実態です。

また、男女共同参画の高額な予算(数兆円)で利権を得ている官僚やら政治家も
これを利用してるので、男女平等(ジェンダー・ギャップ)指数を改善するように本気で取り組む気もないでしょう。

それと、「旦那のお小遣い制」というおかしな制度があるのも日本だけで
これを基準にいれたら、日本はブッチギリの1位を超えて
「女尊男卑1位」になれるといわれております。

その程度の基準だということです。
Posted by 男女平等(ジェンダー・ギャップ)指数 フィリピン at 2014年06月29日 08:04
フィリピンは元々家父長制ですよ。
階級不平等の原因の一つが家父長制だと考えられています。
また、貧困とジェンダーは密接に関係してますが、どちらも大切です。
日本は金持ちですが男女の格差は是正しなければなりませんね。
Posted by 匿名 at 2015年07月10日 09:00
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。