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フィリピン英会話ネット
2009年12月14日

ミンダナオ島の武装勢力



今回の事件は武装集団Lumadnong Pakigbisog sa Karaga (Lupaka:カラガ・ルマドの闘い)に属する2グループ間の対立が原因だったとされている。事件の首謀者オンド・ペレス(Ondo Perez)によると、対立グループにより彼に掛けられた殺人の告訴取り下げが人質解放の条件であり、それを認められたための解放となった。ペレスのグループは対立グループのリーダー ジュン・トゥバイ(Jun Tubay)との間に土地争いを抱えており、これまでに両グループ間の抗争で30人が死亡しているとのことだ。

武装集団Lupaka(ルパカ)は80年代に反政府勢力として結成され、誘拐事件を起こすなどしていたが、国軍の介入により2001年に正式に解体されていた。しかし、武器の回収はできていなかった。

それにしてもミンダナオ島の情勢は複雑でわかりづらい。現地紙に目を通していても、どの地域でどの勢力が問題の背景にいるのかがなかなか釈然としない。

まず、ミンダナオ島には南西部を中心に多くのイスラム系フィリピン人(モロ、ムスリム)が住んでいる。フィリピンのイスラム教人口は全人口の5%(約500万人)、ミンダナオ島人口の2割と見られるが、その多くがこの地域に住んでおり、「マギンダナオの大虐殺」があったマギンダナオ州などはその中心で、周辺6州がイスラム教徒ミンダナオ自治地域(Autonomous Region in Muslim Mindanao, ARMM) に加盟している。MILF、MNLF、アブサヤフを構成するのはイスラム系住民である。

そして、イスラム系以外にもミンダナオ島には先住民族が多い。これら先住民族はルマド(Lumad)と総称されるが、イスラム系住民がミンダナオへ渡ってくる前からフィリピンにいた民だと考えられており、イスラム教にもキリスト教にも改宗しなかった人たちで、大きな集団だけでもマノボ族、チボリ族など13民族いる。今回の事件を引き起こした武装集団はマノボ族によって構成されていた。

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第一回ミンダナオ先住民会議 photo by Keith Bacongco

一方、ミンダナオ島の最大人口を占めるのはキリスト教徒である。これはイスラム教、アニミズムから改宗した者および、ビサヤ諸島からミンダナオへ移住してきた者が構成している。特に、戦後、ビサヤ地域から大量に移住してきた住民と先住民の間での土地争い・摩擦が絶えない。

また、ミンダナオ島は広大で、自然資源、鉱物資源が豊富なことから、戦後、多くの鉱山企業、伐採企業、プランテーションなどが次々と進出した。その際、先住民族やイスラム教徒の土地を二束三文で手に入れ、住民を追い出すことが多く見られた。そして、これは過去の話ではなく、現在も続いている。

鉱山企業の進出に対しては先住民族から強い反対運動が起こることが常なのだが、政府・軍はこれをフィリピン共産党・新人民軍による扇動と見なして潰しに掛かる。その際、軍は先住民族の村へ常駐し、住民に対して尋問・査問を繰り返し、新人民軍につながりのあるゲリラだと見なし超法規的に暗殺してしまうこともある。

また、政府は直接国軍および警察により秩序維持活動を行うだけでなく、民兵組織を組織し、反対住民と対立させる。国軍が組織した民兵組織をCAFGU、警察が組織した民兵組織をCVOと呼ぶのだが、マギンダナオの大虐殺を遂行したとされるアンパトゥアン一族が組織した民兵組織はCVOを中心としたものだったことは記憶に新しい。

つまり、ミンダナオ島にはキリスト教徒、イスラム教徒、先住民族がいて、政府勢力と反政府勢力、進出企業と反対住民、武力闘争と非暴力運動などが入り乱れている。武装勢力だけに限定すると

政府側
国軍:Armed Force of the Philippine(AFP)
国家警察:Philippine National Pollice(PNP)
CAFGU: Citizen Armed Forces Geographical Unit
CVO:Civilian Volunteer Organization
MNLF:Moro National Liberation Front: モロ民族解放戦線
たまに米軍

反政府側
MILF: Moro Islamic Liberation Front: モロイスラム解放戦線
アブサヤフ:Abu Sayyaf Group(ASG)
新人民軍:New Peoples Army(NPA)
先住民族武装勢力
たまにJI(ジェマ・イスラミア)

となる。そして、これら政府対反政府の武力衝突が起こるたびに多くの国内避難民が発生している(2000年100万人、2003年40万人、2008年50万人)。



政府とMILFの間で署名される予定だった和平合意は2008年8月に最高裁によって違憲として破棄されてしまった。これにより、ミンダナオ島の平和はますます遠のいたと言えるだろう。



【参考】
42 Agusan hostages freed
Regime’s Counter-Insurgency Campaign Drives Mindanao Lumads Homeless
posted by philnews at 00:27 | Comment(4) | TrackBack(0) | フィリピン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いくつかの不明だったことが、この記事でわかってきました。マギンダナオの虐殺の二つの部族はともに先住民で、アンパチュアンの民兵組織は合法的なのもだったんですね。まだわからないことがあります。philnewsさんいかがでしょう。

1.先住民族は政府側なのか反政府側なのか。アンパチュアンは80年代に地方の首長に任命されて以来政府側だったのでしょうが、それではマングダダトゥ一族はMILF側だったのか?
2.イスラム法はモスレムにのみ適当されるということだが、アンパチュアンに4人の妻がいるということは、非モスレムでも複数の妻を持つことができるのか?
3、ウィキペディアによると、中央政府からの収入が、自治地区政府の収入の98%を占めており、独自の税収入はほとんどない。また、フィリピンの中でもこの地域はもっとも貧しい。去年最高裁が違憲とした合意案がこの問題の根本的な解決策になるはずだったのか?あるいは、住民投票を再度行い、自治権の放棄の意思を問う時が来ているということなのか。
Posted by max at 2009年12月15日 09:39
maxさん

コメントありがとうございます。

この記事は直接的にはマギンダナオの事件でなく、その後、南アグサン州で起こった小学校の襲撃事件を踏まえて書いたものなので、誤解を招いたみたいです。すみません。

南アグサン州の小学校襲撃は先住民族(マノボ族)の武装勢力の対立を背景としたものですが、マギンダナオのアンパトゥアン一族の問題は全く別で、ムスリムの話になります。

そして、民兵組織CVOは警察業務を補完するために銃の携帯も認められた合法組織ですが、アンパトゥアンは法律の目的を超えて、これを私兵として用いていました。ですから、アンパトゥアンがCVOを私兵としていたことは法律違反です。

次に、3つのご質問についてですが

私にもほとんどわかりません・・・・・

アンパトゥアンは選挙により選ばれた知事ですが、MNLF側は選挙によらず、直接MNLFが統治することを主張していますので、アンパトゥアンとMNLFはそれほど近い関係ではないんじゃないか?と思います。

また、2については、アンパトゥアンはムスリムですので、4人の妻帯が認められているのだと思います。

また、3については、MILFとの和平合意が行われれば、社会・経済発展の基礎となる治安が安定することは予想できます。但し、現在分裂・弱体化しているMNLF、そしてアンパトゥアンのような有力政治家、それに地域内のキリスト教系住民との利害がMILFとの間でどのように調整されるのかはわかりません。
Posted by philnews at 2009年12月15日 17:09
ありごとうございます。といことは最高裁が癌ということか。厳戒令発令に関してこのようなイーメイルが回ってきました。眉唾ですが面白い。
ANALYSIS
You must know that Norberto Gonzales as Defense Secretary is a "terror" operator and if he is to work with political operator Ronaldo Puno, they become a dreaded pair.
Remember that Gonzales came from National Intelligence Security Agency, from where came the Vidal Doble who taped Garcillano's talks with Gloria. Also remember that Puno (the bad one) was instrumental in making Miriam Santiago lose to FVR and in Garci operations in Mindanao .
You must also know that before the Ampatuan massacre, there were hell-bent planning sessions on how Gloria could possibly hold over, de facto or de jure.
They were looking at how they can foment war in Muslim areas to have a justification for sinister plots.
Instead of launching war against MILF and MNLF which is expensive, what Gonzales did was to make "chismis" circulating between two possible warring clans. The timing was perfect because Datu Andal Sr. was so worried how he can stay in power because of the three-term limit. Andal Sr. even went to the Comelec in the Province of Maguindanao to ask what should he do to enable him to run again for the 2010 elections. A "bobo" Comelec official advised him to take a leave. Another Comelec official advised him to resign. Confused, Andal Sr. went to Malacanang and asked an Arroyo confidante what to do. And Andal was told that the only way for him to hold on to power is to prevent elections there from happening. And he was advised to do what is necessary. I do not know what was the advice; but I surmise that he was egged on not to give in to the Mangudadatus who were hell bent on grabbing power from him. In short, "binatirya" or "tsinismis patalikod ang mga Mangudadatu kay Andal na aagawin ang poder sa kanila." And once the power is taken over, the Mangudadatus would take revenge for the earlier raids done on them resulting in seizure of firearms.
Obssesed with desire to keep power revved up by "chismis", the Ampatuans harbored deep hatred and extreme fear of losing power. And to ensure that no election shall occur, the killings should be done with extreme brutality to justify "martial law," a condition when no election can be held in the province. They were only looking at killing and burying to nowhere the Mangudadatus and families so that they would only be recorded as missing and would be charged against the rebels or Abu Sayyaf, not thinking they would be including 30 journalists in their plan for they did not think that Mangudadatu would ask for the help of media men. And if there would be martial law, the Ampatuans stay in power under the hold-over principle. But their game plot failed during the execution. Thank God: before they knew it, Toto Mangudadatu was able to know the abduction because his wife was able to call him up, prompting Toto Mangudadatu to call for Army assistance; the soldiers responded quick enough that forced the killers to escape even though the other victims were not yet buried, leading to the discovery of the plan; thus, the execution failed. The original plot was just to make it appear that the victims disappeared mysteriously so that it can be blamed to heightened rebellion that would justify attacks on MILF which, in turn, would justify martial law.
Until here, I believe I have answered now the question why it should be as brutal as this. It was the Ampatuans who did the act and planned the act. The Gloria government only happened to have benefited from it to justify martial rule.
What would be the net effect when martial law gains momentum in Maguindanao? It will embolden the Gloria machines to do the same in other Muslim provinces: (a) Wahab Akbar's family vs Gerry Salappudin's in Basilan; (b) Sakur Tan clan vs Tupay Loong clan in Sulu; (c) Jaafar clan vs opponents in Tawi-Tawi; (d) Dimaporo clan in Lanao Norte against a challenging clan; and (e) Many clans in Lanao Sur.
Posted by max at 2009年12月15日 18:18
maxさん

興味深い資料のご提供、ありがとうございます。

なるほど、アロヨによる入れ知恵で、なおかつアンパトゥアンは自分達の関与がばれないと思っていたわけですか・・・・

確かに、最初からばれるとわかっていれば、こんなことはやらないはずだと思うと同時に、こんなことがばれないと思う方がどうかしていると考えるのが常識人の判断でしょうが、アンパトゥアンたちはどう考えていたのでしょうね?

まあ、でも、こうした出来事の本当のところは、わからずじまいで終わってしまうのかもしれません。
Posted by philnews at 2009年12月17日 22:36
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