これは選挙期間中、フィリピン共産党・新人民軍(NPA)からのハラスメントを受けない保障として、新人民軍へ支払う「選挙許可料」のことだ。
新人民軍と革命税
新人民軍が選挙許可料を徴収することは今回が初めてではない。これまでの選挙でも行われていたし、全国の企業、そして小さなビジネスからもずっと「革命税」を徴収してきた。
新人民軍はアンパトゥアン一族のような重火器は所持していないかもしれないが、より多くの兵力を抱え、全国に展開している国内最大の非合法武装勢力である。新人民軍はアンパトゥアンのような過激な選挙暴力は通常行わないものの、候補者からの革命税の徴収や、脅迫を行う。
ソルソゴン州では副市長への立候補のためにはP20000、市議会議員及び州議会議員にはP30000、副知事にはP50000、そして知事および下院議員への立候補にはP500000 の「選挙許可料」の支払いが新人民軍により要求されている。軍による武力介入は効果を上げておらず、新人民軍による反乱と革命税徴収は続いている。
政府の人権委員会(Commission on Human Rights:CHR)によりビコール地方で行われた調査によると、2007年の中間選挙では遠隔地にある村落住民の投票を新人民軍が妨害し、レガスピ市だけでも少なくとも20000人が投票できなかったと報告されている。
【出典】The biggest illegal armed group

新人民軍(NPA)
新人民軍(New People’s Army:NPA)はフィリピン共産党(Communist Party of the Philippines :CPP)の軍事部門。ホセ・マリア・シソン(Jose Maria Sison)を指導者として1969年に結成された。マルコス政権下ではマルコス独裁政権への対抗勢力として一定の大衆的支持を獲得し、最大時25800人の兵士を抱える反政府武装勢力として成長したが、86年の民衆革命(ピープルズ・パワー、EDSA革命)へは参加せず、あくまでも武力革命を目指したためアキノ政権成立以降は大衆的支持を喪失。現在は兵力7000人程度まで衰退していると考えられている。
現在も政府との衝突を繰り返す一方、「革命税」名目で企業・小規模事業者から金品を徴収、また、支払いを拒んだ企業への施設焼き討ちや、政府協力者、対立セクト指導者の暗殺等が後を絶たない。革命税は徴収するものの、政府と違い「行政サービス」は提供しないため、住民にとっての利益はない。また、アロヨ政権下では国軍による新人民軍掃討作戦が行われ、新人民軍でないものも巻き込んだ「超法規的暗殺」が横行したため、国際的な問題となっている。

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