
名目GDP成長の国際比較
日本のGDPは1000兆円
IMFの統計によると、1990年の日本のGDPは439兆円。そして2010年のGDPは475兆円程度になると見られる。仮に、他の先進国と同様に1990年から20年間年率4%の名目成長をしていたと仮定すると
439兆×1.04^20 = 439兆 × 2.19 = 961兆円
現在の日本のGDPは約1000兆円となる。もしも現在の名目GDPが1000兆円もあれば、800兆円といわれる債務問題はGDP比80%となって大した問題ではなかったことがわかる。しかし、デフレにより名目成長を行わなかったツケはこんなものではない。債務問題については「国民一人当たり800万円の借金」などといって大騒ぎをしているが、デフレにより日本は、桁違いの損失を生んでいるのだ。それは、この20年間に生み出されるはずだった付加価値を喪失したことである。
「失われた3200兆円」
この20年間で生み出されるはずだった付加価値の合計額は等比数列の和(等比級数)として簡単に求められる。以下の公式に当てはめれば良い。
Sn = a(1-r^n)/(1-r)
ここで
初項 a = 439兆円
公比(成長率) r = 1.04
項数(期間) n = 20年
をあてはめると
S20 = 439兆×(1-1.04^20)/(1-1.04)
=13,060兆円
これにたいし、実際に生み出された付加価値額(名目GDP)の合計は9,858兆円だった(1990年から2009年までの名目GDPの単純な和)。つまり、年率4%の名目成長をしていた場合と、デフレにより名目成長を打ち消してきた現実の日本を比べると
13060兆 − 9858兆 = 3202兆円 の付加価値が実現されなかったということになる。
日本人口は約1億2700万人なので、これを国民一人当たりに直すと
3202兆円 / 1億2700万人 = 2521万円
なんと、国民一人当たり約2500万円も喪失した計算だ。4人家族なら1億円を稼ぎ損ねたのだ。

Photo by E2-E4
デフレによる損失 一人当たり2500万円
このブログで何度も書いてきたように、デフレ不況から脱却するために有効な政策を発動できるのは政府・財務省(財政政策)と日銀(金融政策)のみである。個別企業や個人の合理的な努力は無力なのだ。にもかかわらず、日本はこの20年間、財政支出の拡大が必要な時には「財政再建」を目指して増税・歳出削減を行い、また、ようやくインフレ率がマイナスからプラスへ転じようとすると金融引き締めを行いデフレに引き戻すという、信じられないような財政政策と金融政策を繰り返してきた(日本経済 過去20年の推移)。
その結果が「失われた20年」であり「失われた3200兆円」なのである。
そして、その「失われた3200兆円」の内実が、企業業績の悪化、企業の倒産、失業率の上昇、賃金水準の低下、正社員から非正規社員への置き換え、大卒就職率の低下、自殺者数の増加なのである。こうした問題は他の国なみの普通の経済成長さえしていれば起きなかったことばかりだ。
にもかかわらず、日本では「もう経済成長はいらない」とする言説がまかり通り、または「最近の若者は努力が足りない」と若年層の失業問題を個人個人のミクロの問題へと還元するシバキ主義が横行している。そして、誰もこの「失われた3200兆円」を生み出した張本人である政府・財務省・日銀(そして何も言わない経済学者)への批判や怒りとしてぶつけないようなのだ。
2500万円も盗られたら、普通、誰だって怒るはずなのに・・・・
【参考】IMF: World Economic Outlook Database
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事後報告で申し訳ありませんが、ご理解とご了承お願いします。
コメントありがとうございます。
貴ブログでこの記事を御掲載いただきありがとうございました。
この記事の内容は一人でも多くの方に知っていただきたいものですので、ありがたいです。
コメントありがとうございます。
活発な議論が行われているようで、何よりです。
それにしてもマス・メディアでは今朝の毎日新聞社説で「日銀の政治利用は問題」と題して「物価上昇の目標を決めればデフレが解消されたり、高い成長率が実現できると期待するのは単純すぎる。政府が本来取り組まねばならないのは、いっそうの規制緩和や人材育成策などだが、これらは成果が見えるようになるまで時間がかかる。だから、手っ取り早いインフレ目標導入という発想なら、あまりにも安易で無責任だ。」などと主張しています。
全く何を考えているんだか?
こんな毎日・社説みたいなデタラメな主張を100万人もの日本人が読むとしたら、本当、恐ろしいです。
そんな時にNHKが「日銀が実施できる政策はありません」なんてニュースで言っていたので呆れました。
また、関連記事を作りました。
コメントありがとうございました。お返事遅くなり申し訳ありません。
長らくブログを休んでいましたが、ようやく更新しました。今後ともよろしくお願いします。