
「ノルウェイの森」は22年前に出版された村上春樹の代表作である。上・下巻合わせて800万部以上売れた、長らく日本の単行本発行部数第一位に輝いていた作品だ。それが「1Q84」の発売に合わせ、リバイバルヒットしているらしい。

さて、ここでテレビを見ていて「えっ?」と思う発言が飛び出した。ランキングを発表していた男性が「いやあ、22年前の作品ですからねえ、私、その頃2歳でしたから、恥ずかしながら読んでません。是非、この機会に・・・」と言ったのだ。
耳を疑った。嘘だろ?
別に、小説は発売されたときに読まなくてはいけないものではない。「ノルウェイの森」なんて、発売されてからこれまで、22年間、本屋の村上春樹コーナーへ行けば並んでいたはずだし、古本屋にもいくらでもあったはずだ。そして、なによりあの赤と緑の装丁は目立つ。読もうと思えばいつでも読めたし、村上春樹の作品を読む人なら必ず読んでるはずだ。
自分が「その頃2歳だった」は全く言い訳になっていない。正直に「私、村上春樹は読みません」と言うべきだ。いや、日本で一番売れた小説を読んでいないということは「私、長編小説、読みませんから」が正しいか(というか、黙ってれば良いのに)。驚いたのは、NHKがそうした「本を読まない人」を司会者にしていることだ。本を読まない最近の若者をあえて起用することにより、何等かの効果を狙っているのだろうか?むしろ、本に無茶苦茶詳しい人を司会に据えて、毎回、交通整理をしてもらったほうがずっと役に立つと思うが。
ちょうどノルウェイの森には「古典しか読まない」人物も登場するが、「ノルウェイの森」自身がすでに古典の部類だろう。やはり、小説を読む人は読んでいてしかるべき本なのだ。
