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フィリピン英会話ネット
2011年12月19日

フィリピン・ミンダナオ島を襲った台風21号

フィリピン・ミンダナオ島を襲った台風21号



「洪水警報の不在、満潮、暗闇、そして正常性バイアスが今回、ミンダナオ北部を襲った台風21号の被害拡大をもたらした。それに加え、違法伐採、急速な都市化と鉱山開発が致命的な結果をもたらした。」

台風21号(Sendong)


2011年12月16日〜17日にかけてフィリピン・ミンダナオ島を横断した台風21号(現地名Sendong:センドン)では日曜日(12月18日)の時点ですでに犠牲者711人、不明者数百人の被害をもたらしている。

「住民の就寝中にミンダナオの一ヶ月間の降水量を超える雨が数時間のうちに降った。あたりに広がるパイナップル・プランテーションは水を吸収せず、満潮のため、水路へ流れることもなかった」フィリピン赤十字の事務局長は語った。

カガヤンデオロだけで474人、イリガンで214人、ブキノドンで15人、コンポステラバレーで5人、北サンボアンガで3人の死亡が確認されており、不明者の数もまだ数百にのぼる。

政府と赤十字は食料、衣料、住居の救援を要請している。大統領も火曜日には現地入りする予定だ。

森林伐採と都市化


大統領環境顧問は「北ラナオ州とブキノドン州の主要河川流域の森林伐採が事態を悪化させた」と語る。山が保水力を失い、水が一気に低地へと流れ込んだと考えられる。同じく、周辺地域の違法および小規模鉱山開発が同様な悪影響を与えたであろう。

また、両地域の地理的形状が洪水被害をもたらした。同様に両地域の急速な都市化が地域の保水力を減退させてきた。

さらに、気象関係者が台風がミンダナオに上陸すると思っていなかったことも防災対策を遅らせた。通常、この地域の台風はミンダナオ島から中部ビサヤ地域へと北上するのが普通であるため、カガヤン川には十分な警報システムが備えられていなかった。

オンドイよりも少ない降雨量


北部ミンダナオ地域にはこの時期、雨が降るものの、今回のような雨量は経験したことがない。フィリピン気象庁(Pagasa)によると、マニラ首都圏の80%を冠水させた2009年の台風オンドイは、6時間で300mmという降雨量を記録したが、今回の台風センドンは24時間で180mmというものだった。

国家災害リスク軽減・管理委員会(NDRRMC)は地域住民は台風センドンによる異常降雨の警報は受けていないことを明らかにした。気象庁は台風の進路を正確に予測したものの、住民へ警報は届かなかった。

災害リスク軽減委員会の地方委員会はこれほどの被害が出ることを予測できなかった。この地域ではこれだけ大きな台風が襲来することはなかったため、適切な準備をすることができなかった。

生存者


イリガン市では被災から30時間が経過した後、8マイル離れた沿岸で10人の生存者が救出された。自治体では漁民のボランティアを募り、沿岸の捜索にあたっている。いまだに447人が行方不明である。

水不足


カガヤンデオロでは飲料水が不足している。地域の供給水量は20%にまで減少したため、住民の飲料水を賄えない。市保健所は住民に水を煮沸したうえで飲むことを推奨している。市では住民が水の配給場所に列をつくり、消防団が水を配っている。

社会福祉省は飲料水をマニラから発送し、マニラ水道局は水を積んだタンカーを出航させた。
また、イリガン市では避難所での飲料水も不足している。

(Inquirer誌Deadly mix for disaster 2011年12月19日 要約)



【出典】Deadly mix for disaster
posted by philnews at 06:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | フィリピン台風・洪水 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2010年12月03日

マニラでNHKが見れなくなる?

フィリピン・マニラ首都圏には大きなケーブルテレビ会社が2つあり、多くの家庭が利用している。

スカイケーブルとディスティニーケーブル


最大手はSkyCable(スカイケーブル)であり、これはフィリピン最大のテレビネットワークABS-CBNを抱えるロペス財閥傘下の企業である。全国に50万軒の契約世帯を持ち、最大で120チャンネルの番組を見ることができる。

一方、フィリピン第2位のCATV会社がGlobal Destiny Cable(グローバルディスティニーケーブル)であり、こちらも100チャンネル近くの番組を見ることができる。

2社の最大の違いは利用料金だろう。SkyCableは全チャンネルを見たければGoldプランの月額1000ペソ(約2000円:1ペソ=2円)に加え、Platinum料金でさらに350-800ペソを払う必要があり、かなり高くつくが、Global Destiny Cableは基本料金の月額500ペソ(約1000円)で全チャンネルが見れる。SkyCableもより安価な499ペソプランや280ペソプランを用意しているが、その場合、視れるチャンネル数が大幅に減るのであまりお得とは言えない。

例えば、海外でも見れるNHKの日本語放送であるNHK World Premiumを見たい場合、SkyCableならゴールドプランの月1000ペソを払うか、280ペソの最小プランにNHKの追加料金P250を足して530ペソを払うかの選択となるのに対し、Global Destiny Cableなら500ペソの基本料金でNHKを含めた全チャンネルが視聴が可能だったのだ。

ということで、フィリピン(マニラ)でNHKを見るならGlobal Destiny Cableがお得だった。が、これはすでに過去形である。

watching TV.jpg
Photo by Sage

NHKワールドプレミアム 配信停止


フィリピンのGlobal Destinyでご覧の皆様へ

いつもNHKワールド プレミアムをご覧いただき、誠にありがとうございます。

この度、Destiny Cableの長年にわたる契約不履行により、2011年1月4日をもって同社へのNHKワールド プレミアムの配信をやむなく停止することとなりました。

マニラ首都圏では、同社以外にもケーブルテレビ局SkyCableがNHKワールド プレミアムを配信しております。

以下、SkyCableの連絡先です。

SkyCable
TEL: +63-2-631-0000

お住まいの地域でSkyCableがご視聴いただけない方々は、弊社と直接ご契約いただくことで、NHKワールド プレミアムを有料でご覧いただくことが可能となる場合がございます。詳細につきましては、弊社のホームページ、「新規お申し込みのご案内 > 直接受信のご案内」をご覧ください。

Destiny Cableにてご覧になられている視聴者の皆様にはご迷惑をお掛け致しますが、何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます。

ご不明な点がございましたら、弊社カスタマーセンターまでお問い合わせください。


なんと、Global Destiny CableへのNHKワールドプレミアムの配信が停止されてしまった。以前はWOWOWやBS1まで見れたらしいが、それも忽然と消えてしまったそうだ。そして今回のNHKの配信停止・・・・・

その理由が「Destiny Cableの長年にわたる契約不履行」ということだから、NHKを責めるわけにも行かない。フィリピンの最大の問題点は、このように有名企業でさえ平気で契約不履行・料金不払いなどをやってのけることである。これでは経済が発展しようもない。

信頼が成立していない市場


それにしても、これはフィリピン在住日本人にとっては相当な痛手だろう。コンドミニアム(マンション)のような集合住宅では、個人の判断ではケーブルテレビ会社を変えることさえできないこともあるからだ。つまり、NHKの日本語放送を見れなくなる日本人がかなり生まれることになる。

SkyCableのような大きな会社(例えばPLDTとかPALとかMeralcoとか)はシャア第一位に胡坐をかき殿様商売をするのが常なので、2番手の会社(BayanTelとかCebu Pacificとか)がサービス優先でシェアを拡大し、競争を促してくれることが消費者にとってはありがたい。しかし、デスティニー・ケーブルの場合、それを契約相手への料金不払いによりサービス料金を抑えてきたということになれば褒められたものではない。なおかつ、SkyCableにしてもDestiny Cableにしても、利用者レベルでは月々の利用料金さえ払わずに、分配器などを使って見ているフリーライダーが著しく多いことは言うまでもない。そのコストは真面目に料金を払っている利用者が負担していることになる。つまり、一言でいうと、フィリピンには日本でなら常識的に思われる市場における「信頼」が十分には成立しておらず、それが経済の発展を妨げていると言えるのではないだろうか?
posted by philnews at 20:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | フィリピン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2010年11月06日

デフレの何が悪いのか?−デフレが悪い8つの理由−

デフレの何が悪いのか?− デフレが悪い8つの理由 −

このブログでは一貫して、今の日本経済の悪化の元凶をデフレとし、その克服を目指すこと(リフレ)が必要であるとの視点で書いてきた。今回は「そもそもデフレの何が悪いのか?」について考えてみたい。

デフレの害 1 企業業績の圧迫


まずデフレとは、物価が持続的に下落していく現象を指し、 それは逆に貨幣価値の上昇を意味する。

[世] [画像] - 日本のGDPデフレーターの推移(1980〜2010年)
GDPデフレーターの推移

上の図はGDPデフレーター(名目GDP/実質GDP)の推移である。推移がプラスならインフレ、マイナスならデフレ傾向にあると見ることができる。これを見ると、日本は97年から一貫してデフレであったことが理解できる。

物価が持続的に下落するということは、つまり、企業がこれまでと同量の商品を製造・販売しても、売上高は下落するということだ。もし、その企業だけが商品価格を下げなければ消費者は他企業の商品を購入するから、企業は販売価格を下げざるを得ない。低価格でこれまでと同量しか販売しなければ、必然的に売上げ高は減少する。これについては最近の牛丼の値下げ合戦を見れば想像できるだろう。もちろん、デフレのときには原材料の仕入れ価格も下落しているだろうから、売上げと同じペースで製造コストも下落していれば企業にとって問題はない。しかし、実際には人件費の下落だけはペースが遅くなるので、企業の利潤は物価下落率以上に圧縮される。

例えば、売上げに占める人件費の割合が30%、その他のコストが60%を占め、残りの10%が利潤となる企業を考える。デフレで売上げ額が3%下落し、人件費を除くコストも3%下落したとしても、人件費が下落しなければ利潤は12%も減少してしまう。

つまり、デフレの時には賃金の相対的な高騰が企業業績を圧迫するのである(相対的な高騰とは、物価が下落する中で賃金だけが下落しないことによる高騰を指す)。

デフレの害 2 失業の増加・格差の拡大


そこで、企業は思い切った人件費の圧縮に乗り出さざるを得ない。

デフレ率が3%のとき、自動的に人件費も3%削減できればよいのだが、既存の賃金制度や労働組合の存在によりなかなかそうはいかない。そこで企業が行ったのは、リストラによる従業員の解雇、新規採用の停止と正規社員の非正規社員への置き換えだった。つまり、日本の場合、人件費の圧縮は主に失業率の増加と若年層の賃金引き下げにより実現されたのである。また、相対的に高くなった人件費を嫌って、生産工場を海外へ移転する動きも活発化した。これは国内直接投資を減少させるから、雇用を縮小させた。

[世] [画像] - 日本の失業率の推移(1980〜2010年)
失業率の推移

実際、バブル崩壊後に上昇しながらも3%台を保っていた日本の失業率は97年(橋本内閣の失政)を契機として上昇率を高め、2001年には5%台にまで上昇した。この97年以降は日本が明確にデフレ入りした時期と一致している。

つまり、デフレは失業を増大させ、なおかつ、若年層の賃金を引き下げることにより世代間格差を拡大させたのである。

デフレの害 3 財政問題の悪化


デフレのもう一つの害は財政問題の悪化であり、これは名目成長率の低迷によりもたらされる。名目成長率とは名目GDPの成長率を指し、実測される経済成長率である。ここからインフレ率を引いたものが実質成長率であり、本当の経済成長率となる。

名目GDP成長率 = 実質GDP成長率 +インフレ率

の関係があるから、インフレ率が高いほど、名目経済成長率は高くなる。

名目GDPが重要な意味を占めるのはそれが税収を左右しているからだ。所得税にしろ、法人税にしろ、これらは所得や利益に対してかかるわけで、国全体としての所得・企業利益が増大すれば、それだけ税収も増大する。特に、所得税は累進課税により「所得の階段」を上った者により重く掛かるので、多くの人の所得が増える時期(=名目成長している時期)には名目成長率以上のペースで増加する。同じく法人税も企業が黒字の時に税収が増える。

デフレでは名目成長率は低下するので、その分、税収も増加しないことになる。さらに、デフレが不況を伴えば、生活保護等の社会保障費や、不況対策のための公共事業費が増大するので、歳入の減少と歳出の増加が同時に起こり、財政を悪化させることとなる。

デフレの害 4 債務問題の悪化


デフレにより物価や所得は減少するものの、一旦借り入れた借金(=債務)は減少しない。債務は元本に利息がついて増加するものだし、デフレになって金利が低下しても、元本は減らないから債務負担は実質的に増加する。

Debt GDP ratio.JPG
債務残高の対GDP 比

これが日本の債務問題を直撃している。日本の名目GDPに占める国債残高(=債務残高)がG7の中でも突出しているのは、日本だけが国債残高を増加させているからではなく、単に、日本だけが名目成長していないからであることについては「債務残高の国際比較」で検討した通りである。

そして、名目GDPが成長せずに、国債残高だけが増加すれば、債務が長期的に見て返済不可能になるかもしれない。名目GDPが増加しなければ、返済原資にあたる税収も増えないからだ。

デフレの害 5 消費の減退


経済がデフレ状態にあり物価が持続的に下落していれば、消費者は今消費するよりも、将来消費したほうがより多くの財やサービスを購入できる。貨幣は置いておくだけで日に日に価値を増すのである。わざわざローンを組んでまで、将来の値下がりが予測されている住宅や自動車を購入しようとは思わないだろう。このように、将来にわたるデフレが予測されるとき、消費は減退する。

ちなみに、フィリピンのようにインフレ率が5%前後で推移している国では状況が全く異なる。ちょっとした小金が舞い込んだだけでも、人々は我先にと消費や投資に回す。経済学など学んでいない田舎の農民でも、ちょっとお金が入っただけで、サリサリストアを始めたり、裏庭で豚を飼ったりするのである。なぜなら、現金のままで置いておいても価値が目減りすることを知っているからだ。銀行に預けたときの預金利息(せいぜい1%)より、インフレ率の方が高いから、消費に回すか、投資に回すほうが合理的なのである。

sarisari store.jpg
Photo by Keith Bacongco

デフレの害 6 投資の減退


また、企業にとってはただでさえデフレで人件費が相対的に高騰している上、上記のように需要が減退している中での新規投資はリスクが高い。その上、デフレ下では実質金利が高くなるから投資へのインセンティブが減退する。

例えば、銀行から借り入れるときの金利が3%だとする。100万円を借り入れたら、1年後に103万円を返済すれば良い。しかしここで、デフレ率が2%なら、1年後の100万円の実質価値は102万円になっている。つまり、1年後の返済額が103万円だとしても、それは実質的に105万円を返済しているのに等しいのだ。この5万円のことを実質金利と言い

実質金利=名目金利−インフレ率

の関係がある。

デフレのときは名目金利にデフレ率を足したものが実質金利となる。だから、今、ゼロ金利だの、史上最低の金利水準だの言われても、実際には 借り入れ金利+デフレ率 が借り入れコストとなるわけで、決して金利水準が低いとはいえないのだ(実際、70年代の高インフレ時代は、貸し出し金利が高くとも、実質金利はマイナスの水準だったし、バブル景気のときも実質金利は今よりも低かった)。

つまり、企業にとってはデフレによる賃金の相対的な高騰、消費の減退に加えて、実質金利の高止まりという状況に直面することになるから、投資のリスクは高くなり、積極的な投資を行おうというインセンティブがなくなる。

デフレの害 7 イノベーションの鈍化


一言で言うと、インフレは安全志向の貸し手からリスク・テイカーである借り手への所得の移転であり、 デフレは逆にリスク・テイカーである借り手から、安全志向の貸し手への所得の移転であると言える。

これまで見たとおり、インフレにより債務(借金)の実質的価値は減少するので、インフレの時には借り手が有利になる。逆にデフレのときは借り手が不利になる。社会で、借り手とは企業のことである。一般的に企業は銀行等から資金を借り、投資し、企業活動を行うことにより富(付加価値)を生み出す。また、企業活動は必ず成功するわけではなく、常にリスクを抱えながら投資を行っている。このリスクに対する報酬こそが利潤だと考えられる。しかし、デフレでは借金をすることが不利になるので、ただでさえリスクを取りに行っている企業は、より不利な条件に直面することになる。

反対に、貸し手とは安全を志向する主体である。貸し手はできるだけリスクを避け、投資活動よりは低利でもよいから銀行に貯蓄する。デフレでは、この安全志向の貸し手がより有利となる。

リスクをとらないことが有利な状況をつくりだしてしまえば、投資は減退し、経済は成長しなくなる。経済は、儲かるかどうかわからないにもかかわらず、エイヤッと投資する企業(=リスク・テイカー)がいて初めて回るものであり、そうしたリスクを負っての未知への挑戦こそが技術革新の原動力である。デフレはこのリスクを高め、ハードルを上げることによりイノベーションを鈍化させてしまうのだ。


デフレの害 8 円高の進行


最後に、円高について触れておく。

円高とは円が他の通貨に対して高くなることである。つまり、円の価値が高まることだ。

そもそもデフレの国の通貨の価値は日に日に高まっている。通貨の購買力が上昇しているからだ。その反対にインフレの国の通貨の価値(購買力)は下落している。この2つの通貨の交換比率は、その購買力に合わせてデフレの国(日本)の通貨(円)が高くなり、インフレの国(アメリカ)の通貨(ドル)が安くなることは必然である。

もちろん、為替相場は通貨の購買力だけで決定されるものではない。為替市場では通貨への需要と供給で交換レートが決定するから、購買力以外の要因も重要となる。その中でも重要なのは金利である。

日本の金利が低く、アメリカの金利が高いなら、日本の銀行で円を借りて、それを為替市場でドルに交換しアメリカの銀行へ預け入れれば、それだけで金利差分の利益が手に入る。これはいわゆる円キャリートレードといわれるもので、リーマンショック前までは活発に行われていた。この時、為替市場では円を売りドルを買う取引が行われるから、円安・ドル高に為替が動く。日本はデフレにも関わらず、円安が進行したのだ。

しかし、リーマンショック後は、各国ともに金融緩和により金利を大幅に引き下げたので、もう金利差は存在しない。金利差が為替を決定する要因として重要度を失えば、購買力の差が効いてくる。

このようにして、現在は一方的な円高が進行しているのである。

そして、円高が進行すれば、日本人の人件費は相対的に高くなる。企業は高い人件費を嫌い、生産拠点を海外に移すようになるのである。

最後に


クルーグマンによれば経済で重要なことは3つ。生産性、所得分配、そして失業である。この3つの中にデフレという言葉はない。



にもかかわらず、デフレがことさら重要だとするならば、それはデフレが生産性を低下させ、分配を歪め、失業率を増加させるからだということになる(もっとも、当時のアメリカ経済にとってデフレは想定外であるため、わざわざ議論されなかったというほうが正しいかもしれない)。

生産性の低下はデフレによる企業業績の圧迫、消費の減退、投資の減退、イノベーションの鈍化によってもたらされる。デフレは名目成長の低下だけでなく、実質成長までも抑制してしまうのだ。分配の歪みは、若年層の賃金低下によってもたらされる。また、デフレはそれ自身が借り手から貸し手への所得移転として分配を歪めてしまう。そして、失業率の上昇は企業業績の圧迫で発生し、円高の進行による企業の海外移転によって拍車がかかる。

このように、デフレは消費と投資の双方を鈍化させるから不況の原因となる。日本の20年の大部分はデフレ不況だった。さらに、デフレそれ自体が不況を伴わないとき(2004−2007年)でさえ経済にネガティブなインパクトを与えていると考えられる。この時期にインフレを伴っていたならば、日本は外需だけに依存せず、内需の拡大により、より大きく実質成長していただろうと考えられるのだ。

以上、企業業績の圧迫、失業の増加・格差の拡大、財政問題の悪化、債務問題の悪化、消費の減退、投資の減退、イノベーションの鈍化、円高の進行の8つがデフレの害だと考えられる。
posted by philnews at 06:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2010年10月25日

バランガイ

バランガイ(Barangay)の語源は他の東南アジア地域からやってきたフィリピン人の祖先たちが乗っていた、その船(マレー語でBalangay)のことである。当時、到着した集団毎に50−100軒程度の小集団で集落を形成していたと考えられている。フィリピンの村落は古くはバリオと呼ばれていたが、マルコス政権時代にバランガイと改名された。



バランガイは地方自治体


バランガイはフィリピンの最小行政単位であり、2010年現在、全国に42025存在する。フィリピンの行政構造は基本的に国−(地方)−州−市・町−バランガイとなっており、このうち地方(Region)を除く全てに首長と議会が存在している。フィリピンの人口が約9000万人であることを考えると、バランガイの平均規模は400世帯・2000人強ということになる。

バランガイは日本の町内会と似た組織だと語られることが多いが、実際は地方自治体としての法的地位を有しており、法的には自主団体と分類される日本の町内会よりも格段に大きな権力を持っている。具体的にはバランガイ議会での立法権(バランガイ条例)、バランガイ・キャプテンのもつ行政権(逮捕権含む)、そして同じくバランガイ・キャプテンが裁判長を務めるバランガイ裁判所の司法権と、3権を有する政府組織である。このうち、バランガイ裁判所について見れば、犯罪に対して罰則を与えるというよりは、村人の間の揉め事を調停し、平和に保つことが目的といえる。バランガイ裁判所で解決できない案件や、その守備範囲を超える犯罪についてはより上級の裁判所が扱うことになる。

barangay 01.jpg
Photo by archangel_raphael

バランガイの財源


バランガイの財源は人口や面積に応じて国から配分されるIRA(Internal Revenue Allotment:内国歳入割当金)が大部分を占め、他に、サリサリストアやトライシクルから徴収される営業許可税、そして固定資産税の一部などの独自財源も持つ。特に、サリサリストアや住宅の多いマニラ首都圏のバランガイでは営業税・固定資産税などからもたらされる税収も大きいが、農村バランガイの場合は、IRAによる収入だけで歳入の90%を超える。今年の全国のバランガイに対するIRA配分の総額は510億ペソ(1000億円)となっており、法律では中央政府の税収のうち40%はIRAとして全国に配分されると定められている。

人口2000人程度の平均的な農村バランガイの場合は、IRAが100万ペソ(200万円)程度しかなく、ここから人件費、活動費、そしてインフラ開発費などの全ての予算を捻出することになる。また、バランガイ予算の10%は自動的に青年議会(SK)に配分される。一方、マニラ首都圏の10万人以上の人口を抱えるバランガイでは年間予算が2500万ペソ(5000万円)にも上り、これは農村地域の町予算よりも大きい。また、その10%にあたる250万ペソ(500万円)の予算が与えられる青年議会は農村バランガイよりも大きなお金を管理することになる。

barangay election.jpg
Photo by Keith Bacongco

バランガイ選挙


これら予算を管理し、自治を行うバランガイ・キャプテン(1人)、バランガイ議員(7人)と青年議会議長(1人)・青年議会議員(7人)は基本的に4年に一度の選挙で選出されることになっているが、バランガイ選挙は延期されることも多いので、実際にはちょうど4年毎というわけでもない。また、選挙で選出される議員の他に、事務局長、会計役などを置き、行政サービスを担う組織としてバランガイ・ヘルス・ワーカー(保健婦)、バランガイ・タノッド(自警団)などがある。

バランガイは住民にとって、特に、農村地域の住民にとっては一番身近な生活に密着した政府なので、バランガイ役員を決める選挙は白熱する。特に、バランガイ役員のなかでも、長であるバランガイ・キャプテンには権限が集中するため、バランガイ・キャプテンが有能であるかどうかは住民にとって非常に重要なこととなる。一般的に有能なバランガイ・キャプテンとは地域に政府のプロジェクトを誘致する能力があり、なおかつ、便益を公平に配分してくれる人格を指す。年間予算100万ペソ程度では地域のインフラ整備などできないから、実際には上級機関(町・州)や、国会議員のもつ地方開発予算(ポークバレル)にアクセスすることによって村内のインフラ整備は行われる。一方で、こうしてもたらされるプロジェクト予算から一定の割合を自分のポケットに納めてしまうバランガイ・キャプテンがいることも事実であり、村の発展を目指す候補たちと自分の権力欲と懐を潤したい候補たちが共に立候補するのがバランガイ選挙なのである。
posted by philnews at 20:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | フィリピン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2010年09月16日

為替介入と非不胎化介入

一昨日(9月14日)は民主党の党首選挙で菅代表が再選され、菅首相の続投が決まった。しかし、この結果を受けこれまで円高基調で推移していた為替相場はさらに円高が進み15年3ヶ月ぶりに82円台に突入。翌朝、これまで見守るだけだった政府は、ようやく重い腰を上げ為替介入に踏み切った。日本による為替介入は実に6年6ヶ月ぶりである。


為替介入


為替介入とは、一般に、通貨当局が外国為替市場において、外国為替相場に影響を与えることを目的に外国為替の売買を行なうことを言う。日本では、財務大臣が円相場の安定を実現するために用いる手段として位置付けられており、為替介入は財務大臣の権限において実施される。日本銀行は、その際に財務大臣の代理人として、財務大臣の指示に基づいて為替介入の実務を遂行する。

為替介入は、各国の通貨当局が自主的に判断して決めるが、複数の通貨当局が協議のうえで、各通貨当局の資金を用いて同時ないし連続的に為替介入を実施することを「協調介入」と呼ぶ。今回は日本が単独で行ったので「単独介入」である。

日本銀行が財務大臣の代理人として行なう為替介入は、すべて政府の「外国為替資金特別会計」(外為会計)の資金を用いて行われる。この資金は、大別して外貨資金と円資金によって構成されており、ドル買い・円売り介入の場合には、「政府短期証券(FB)」を発行することによって円資金を調達し、これを売却してドルを買い入れる一方、ドル売り・円買い介入の場合には、外為会計の保有するドル資金を市場で売却して、円を買い入れることになる。

今回は円高是正のためのドル買い・円売り介入なので、そのための資金は政府が発行した「政府短期証券(FB)」を売却して調達したことになる。

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Photo by Roger Smith

不胎化介入と非不胎化介入


昨日(9月15日)のニュースでは日銀による不胎化介入・非不胎化介入という言葉が乱れ飛んでいた。例えば

日銀、介入資金を吸収しない方向=関係筋
[東京 15日 ロイター] 関係筋によると、日銀は、15日の外為市場で実施した円売り/ドル買い介入で供給した資金を吸収せず非不胎化する方向。
 日銀は15日、政府・日銀がドル買い/円売り介入を実施したことを受け、「強力な金融緩和を推進するなかで今後とも金融市場に潤沢な資金供給を行っていく方針」との総裁談話を発表した。


為替介入の実施と同時に注目を集める非不胎化介入とは何なのか?

為替介入のための資金調達は政府が「政府短期証券(FB:Financing Bill)」を発行・売却することにより得られる。現在、FBは基本的に市場で売却されることになっているので、資金調達と同時に市場の資金を一旦吸収することになるが、為替介入と同時に円が市場へ供給されることになるので、全額が市場調達される場合には市場での資金量の変化は差し引きゼロとなるはずである。但し、FBを日銀が買い取った(引き受けた)場合は、新たな資金が市場に供給されることになるので、市場での資金量は増加する。

つまり、為替介入(ドル買い・円売り)のための資金を日銀が供給すれば、円高が是正されると同時にベースマネーが増加することになり、金融緩和の役割も果たす。

ベースマネーの増加はインフレ要因となりうるから、ここで日銀が市場の資金量を調整するために、市場から資金を吸収すること(国債の売りオペによってなされる)を不胎化介入と呼ぶ。インフレの種が蒔かれることを「胎化」、それを発芽させないことを「不胎化」と呼ぶのだ。

fetus.jpg
Photo by lunar caustic

では、さらに非不胎化介入とは何なのか?

これは不胎化介入をしないという意味なので、為替介入により市場に出回る円が増加しても、日銀はそれを吸収しませんよということだ(不胎化介入しないという意味)。

昔は為替介入のための資金は日銀が供給していたので、為替介入により市場に出回る資金量は増加した。そのため、増加した円を日銀が国債の売りオペなどで回収していたのだ(不胎化介入)。だから、資金を吸収せず、市場に出回る円の量を増加したままにすることが非不胎化介入だった。

しかし、今は原則的に為替介入の資金調達は市場で行われる。この場合、為替介入しても市場に出回る円の量は結果的に変化しない。この場合の非不胎化介入とは、日銀が為替介入分に用いられた円と同額を市場に供給することを意味するのだが、果たして、そんなことが行われているのだろうか?

この点について調べてみたのだが、明確に解説しているメディアはほぼ皆無だった。

しかし、メディアではさかんに「日銀は非不胎化介入を決定」などのニュースが報道されている。ということは、為替介入のための資金を日銀が供給したか、あるいは日銀が為替介入に用いられた資金に相当する円を国債買いオペによって市場に供給したかのどちらかということになる。しかし、実のところ日銀はより消極的に「日銀は市場から円を吸収せずに見守ります」という何もしないことを持って「非不胎化介入」と呼んでいる可能性さえ排除できない。

残念ながら筆者はそれを判断するに十分な情報を持っていない。もっというなら、為替介入によって市場に出回る円の量が増加するのか、しないのかというのは非常に重要なポイントなのにも関わらず、それを判断できるだけの情報が国民に与えられていないとも言えるのではないだろうか?

為替介入について比較的わかりやすく解説されている朝日新聞の記事でさえ

円売り介入、長期化の可能性 日銀のサポートがカギ
日銀は15日、円売りドル買いの為替介入で金融市場に投入される円資金の一部を回収せず、市場に出回る円資金の量を増やす「非不胎化」に踏み切る方針を決めた。円売り介入では、金融機関からドルを買って円資金を支払うため、金融市場に出回る円の量が大量に増える。

と、資金の調達元を検証することなく「為替介入すれば市場に出回る円の量が大量に増える」と説明してしまっている。


必要なのは金融緩和とリフレ


ところで、今回は円高是正のために為替介入が行われたわけだが、実のところ、こうした人為的な為替介入は必要さえなかったと言える。

現在、円がドル、その他の通貨に対して一貫して高くなっている理由は、アメリカその他の国々がリーマンショック以降の景気後退に対応して金融緩和を行い、ドルやポンドをどんどん印刷していることだ。ドルが増えて、円が増えなければ、円高・ドル安になるのは自明の理である。

ならば為替介入なしに円高・ドル安を是正する方法は何か?それは、日銀も円を増刷すればよいのである。つまり、一層の金融緩和(量的緩和)である。

どの程度の金融緩和が必要か?と言えば、日本は今、デフレなのだから、せめてインフレ率2%程度になるまでの円の増刷である。もし日銀が「インフレ率が2%になるまで毎月3兆円分の長期国債を買い切ります」と宣言し実行したなら、市場には年率2%のインフレ期待が生まれて、ようやくデフレから脱却し、なおかつ、インフレ期待に合わせて為替相場も円安方向へと転換するだろう。

どちらにしても、今回の為替介入をより効果的にするためには、為替介入と同時に市場に出回る円の量を増加させ、金融緩和の意味を持たせる非不胎化介入は最低限必要な措置だと考えられる。

【参考】日本銀行
財務省 円の国際化の推進策について 
posted by philnews at 15:41 | Comment(6) | TrackBack(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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