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2009年11月06日

勝間和代さんがすばらしい

経済評論家の勝間和代さんが、民主党・菅直人副総理・国家戦略担当相とデフレ対策の議論を戦わせた。

カツマーの教祖Vs菅副総理 デフレ対策で通貨大量発行?

菅直人副総理・国家戦略担当相と経済評論家の勝間和代氏が5日、今後の財政政策などについて議論を戦わせた。勝間氏は「若年層の失業対策と財政再建の特効薬はデフレを止めるこだ」と主張し、日銀による金融緩和策を断行し大量の通貨を発行することを提案したが、菅氏は難色を示し、約1時間に及んだ論争は物別れに終わった。


勝間和代さんは「若年層の失業対策と財政再建の特効薬はデフレを止めるこだ」と主張し、日銀による金融緩和策を断行し大量の通貨を発行することを提案したが、菅氏は難色を示した。

勝間さんは

デフレ脱却策として日銀による金融緩和政策誘導を提唱し、「政府が応援すれば日銀はやる。もし菅氏が(日銀に)行くなら、私も横にいて応援しますから」と決断を迫った。

さらに

菅氏が「どうすればいいのか」と尋ねると、勝間氏は「紙幣をたくさん刷って、借金にして政府がばらまく。国債発行は悪くない。実際は投資であり、将来の税収なり投資した資産で賄えばいい」と大胆にたたみかけた。

しかし

菅氏は「勝間氏の話は極めて魅力的だ」と持ち上げつつ、「日銀がやってくれるなら明日にでも言おうかという気はあるが、どこかのお金を持って きて一時的に使っても、結局どこかのお金が使えなくなって返さなければいけなくなる」

と、難色を示し、議論は物別れに終わったそうである。


まず、勝間和代さんはすばらしいの一言。ここまで正面切って政府に日銀による金融緩和政策によるデフレ対策を求めたことが凄い。こうした、経済学の基本に忠実な経済評論家はすばらしいなあ。

勝間さんの「若年層の失業対策」こそが一番重要な課題で、そのためにはまずデフレを止めることが重要であり、なおかつ、デフレを止めることこそが財政再建につながるという認識の正しすぎること、正しすぎること。

それに対して、菅直人大臣の「どこかのお金を持って きて一時的に使っても、結局どこかのお金が使えなくなって返さなければいけなくなる」という返答は的を射ていないように聞こえる。そんなこと言ったら、全ての財政政策を否定することになって、経済における政府の存在意義はなくなる。不況下では家計や企業が合理的に行動すればするほど不況が悪化するので、それを食い止められるのが唯一、政府・中央銀行なんだから。

政府が日銀にデフレを止めるための金融政策の実施を要求しなければいけないのは次の記事が理由。


日銀は今後3年間デフレが続くことを予想していながら、インフレ的な政策は採用しないと明言している。デフレであることをわかっていながら、何も対策を打とうとしない中央銀行なんて、頭がくらくらしそうだ。ここで政府の側から日銀に対してデフレを止めるための金融緩和を要求しなければ、また何年も日本はデフレ不況の中で企業倒産、賃金カット、解雇、失業の増加を続けることになってしまう。そうすると、職に就けなかった若年層は職歴のないままさまよい、いざ、仮に景気が回復しても、その頃には労働力としての経験不足により取り返しがつかないようになっているだろう。

昨日の「日本とフィリピンのGDP推移」で示したとおり、こんなことしているのは日本だけなのだ。

それにしても、勝間和代さんのような知名度と人気のある経済評論家や、経済学者、そして経済学のわかっている国会議員が協力して日本の経済政策を正しい方向へ導いてくれれば良いんだけどなあ。

【関連】
勝間和代の本
勝間和代公式ブログ
勝間和代オフィシャルサイト
posted by philnews at 03:21 | Comment(4) | TrackBack(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2009年11月05日

日本とフィリピンのGDP推移

フィリピンの過去20年の名目GDPの推移は以下のようになる。

[世] 名目GDPの推移(フィリピン)

このグラフを見る限り、着実に年々成長を続けていることが確認できる。

次に、同じ期間の先進国のGDP推移を見てみよう。先進国代表、アメリカの名目GDP推移は以下のようになる。

[世] 名目GDPの推移(アメリカ)

このグラフからわかるとおり、アメリカのGDPも着実に成長を続けていたことがわかる。

次に、ドイツの名目GDP推移は以下のようになる。

[世] 名目GDPの推移(ドイツ)

このグラフからわかるとおり、日本とほぼ同じ経済規模を持つドイツのGDPも着実に成長を続けていたことがわかる。

最後に、同じ期間における日本の名目GDPの推移は以下のようになる。

[世] 名目GDPの推移(日本)

あれ?

このグラフからわかるとおり、日本の2009年の名目GDPは1992年の名目GDPと変わらないということがわかる。日本だけ、17年間成長していないのだ。これはどういうことかというと、企業売上げや雇用者の賃金が1992年からずっと上昇していないということだ。

たねを明かせば、これはデフレのなせる業である。世界で唯一、日本だけが10年以上にわたってデフレを続けた。途上国は当然として、アメリカもドイツも、その他の先進国もみなインフレのある経済の中、順調に経済を成長させているのに、日本だけがデフレで失われた10年、今や、15年を経験して、名目でみると経済成長していない。

これがどれだけ異常事態であるのかは、筆者が説明するまでもなく、上のグラフを見比べれば一目瞭然だろう。普通の国は、先進国でも途上国でもインフレとともに経済成長しているのである。デフレで唯一、経済成長していない国、それが日本だ。こんな異常な経済運営を平然と続けているのが、政府、そして日本銀行である。

もちろん、詳細に検討するには実質GDPやインフレ率、そして国民一人当たりGDPなどを比較する必要があるのだが、とりあえず今日は、視覚的に日本経済のこの15年にわたる異常を表現するに留める。

政府の経済運営に関して言えば、日本はフィリピンにさえ劣っているのかもしれない。

【参考】世界経済のネタ帳
posted by philnews at 02:54 | Comment(0) | TrackBack(1) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2009年10月27日

民主党は一日も早く教科書レベルの経済対策を!

民主党に経済対策が一つも見当たらないことはこれまでも指摘してきたが、これまで唯一の経済対策として発表されていた民主党の「子ども手当て」がどうやら、というか、やはり景気刺激策になりそうにないことがわかった。
子ども手当の使いみち、「貯金」が65%

民主党がマニフェストに掲げた「子ども手当て」の使いみちについて、65%の人が「子どもの将来のための貯金」と回答したことが民間の調査で分かりました。

 インターネット調査会社「マクロミル」が20歳から40歳代までの既婚の男女1000人を対象に行った調査によりますと、中学生以下の子どもがいるおよそ650人のうち9割が「教育費に不安を感じている」と回答しました。

 その中で、来年度から支給される予定の「子ども手当て」の使いみちについて複数の回答を聞いたところ、66%の親が「子どもの教育費」と答えた一方、「子どもの将来のために貯金する」と答えた親も65%と、ほぼ同率でした。

 また、調査では、子どもを欲しいと思う人のうち、「子ども手当て」が「出産の後押しになる」と考える人が6割を超えています。(26日12:02)


民主党はこれまで子ども手当てにより内需拡大を促し、経済の回復を達成すると言ってきた。しかし、そもそもその財源を他の政府支出から捻出すれば効果は減税と変わらず、なおかつ、削られた政府支出の分だけGDPを抑えるので、子ども手当ての消費性向が十分に高くない限り経済対策にはならないことを指摘してきた。そしたら、案の定、子ども手当ては消費に回りそうに無い。経済成長が見込めず、失業・老後の将来不安を抱えた中では一時的な収入は消費に回らず、貯蓄に回るというのが経済学が明らかにしてきたことだ。そういう、教科書レベルの知識で予測がつくことをわざわざやって、さらに日本経済を冷え込ませる政策を実施しているのが民主党である。

ところで、「子ども手当ては少子化対策であって経済対策ではない」という人がたまにいるので、当の民主党のサイトから「経済対策関連法案について」を引用しておく。
米国に端を発する金融危機及び足元の急速な実体経済の悪化に対応するため、以下の法律案を今国会に提出し、早急な成立を図る。

1.生活を守る経済対策(内需拡大策)

(1)「子ども手当」法案(今国会提出)…子ども・男女
 平成21年4月より、「子ども手当」を実施する。
 なお、平成21年度の支給額は別途検討する。
http://www.dpj.or.jp/news/?num=14667


民主党は明確に「経済対策だ」と言っているのだから、「子ども手当ては少子化対策であって、経済対策ではない」というのは、当の民主党に言ってあげるべき言葉だ。

ところでその民主党の藤井財務相はこんなことも言っている。
たばこ税は「ニコチン量で見直しも」 藤井財務相

藤井裕久財務相(政府税制調査会長)は27日、都内で講演し、たばこ税について「健康面を考えないといけない。ニコチン含有量が多いのは(税率を)重くして、少ないのは軽くするという改革はありえる」との見方を示した。

民主党は7月にまとめた政策集で、たばこ税について「国民の健康確保を目的とする税にあらためるべきだ」と明記。喫煙率を下げるための価格政策の一環と位置づけている。ただ、「アルコール度数に比例した税制とする」と盛り込まれた酒税とは違って、たばこ税の具体的な課税方法は明記されていなかった。


そもそもタバコの害とはニコチンのみによるものだっただろうか?それよりも数百種類含まれるという様々な有害物質、特に、タールに起因するものだと理解していたが。そもそも、みんながニコチンの少ないタバコを吸えば、害も少ないのだろうか?あまり変わらないという報告を読んだこともあるが・・・・

とりあえず、こんな科学的な根拠の薄いことを発想している時間があるなら、常識的な、教科書レベルの経済対策、つまり、財政政策と金融政策の組み合わせをまずは実施してもらいたい。

ところで、藤井財務相がそんな珍説を発表しているさなか、日銀が2011年度も物価マイナスとなるとの予測を発表した。
日銀が3年連続物価マイナス予測へ

[東京 27日 ロイター] 日銀は10月30日に公表する「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)予測を2011年度まで3年連続でマイナスとする見通しだ。

 日銀は景気が下振れれば、景気悪化と物価下落の負の連鎖となる「デフレスパイラル」に陥りかねないことから、超低金利政策を維持して粘り強く景気を下支えしていく方針。

<潜在成長率は1%を下回る公算大>

 日銀は、物価見通しと表裏一体の関係にある潜在成長率が、足元で低下しているとの見方を強めている。4月末に公表した前回の展望リポートでは、資本ストックの伸び率が低下していることなどを反映して「1%前後」に引き下げたが、足元は1%を下回っているとの見方が有力だ。


景気が冷え込み、失業率は上がり、来年度も物価マイナス、つまりデフレ不況が続く。「子ども手当てで内需拡大」とか「円高で内需拡大」、「たばこ税率はニコチン含有量で」みたいな珍説を発表している時間があったら、民主党には一日も早く「教科書レベルの経済政策」で良いから実施してもらいたい。
posted by philnews at 22:28 | Comment(2) | TrackBack(1) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2009年10月26日

ベーシックインカムの財源

週末の「朝まで生テレビ」で出演者の1人(東浩紀)がベーシック・インカムに言及したらしく、にわかにベーシック・インカム論議が盛り上がっているようだ。ベーシック・インカムについては「政府はベーシックインカムの導入を」で論じたが、今回は、ベーシック・インカムの実現可能性について1)財源 2)労働インセンティブ 3)企業の生産性 4)物価上昇 の4つの問題について考えてみたい。


1)ベーシック・インカムの財源


ベーシック・インカムの財源は、国民の生み出す富にある。日本のGDPが年間500兆円、勤労者所得がその7割の350兆円だから、ベーシック・インカムとはこの350兆円のうちの一部を再分配するという話に他ならない。つまり、究極的には350兆円を超えない限り、財源は問題とならないといえる。もちろん、現実的には350兆円全てをベーシック・インカムに費やすというのは税率100%となり共産主義でもやらない話なので、より具体的な額と財源を考えたい。

ベーシック・インカムは所得の再分配の一種なので、簡単には高所得者から低所得者への移転であり、同時に、現存する社会保障制度の置き換え、一本化でもある。そこで、財源としては高所得者への増税と、現存の社会保障費の置き換えで確保する必要がある。

月額5万円を全国民に配分し、高所得者からは税金で相殺・回収することを考えて、実質的に5000万人に給付することになるとしよう(但し、この場合でも、税金により一部しか回収されない人と、全額回収されない人がいて、全体で給付額の方が多くなる人の数は5000万人を大きく超えるが、単純化のため、5000万人が全額を受け取ると仮定する)。そうすると必要額は5万円*12ヶ月*5000万人=30兆円となる。これだけでも無所得・失業中の世帯(家族3人)が月額15万円受け取れることと成る。

ベーシック・インカムは社会保障制度なので、目的が重複する社会保障は廃止・縮小する。そうすると、30兆円の財源を捻出するための試算は以下のようになる。

ベーシックインカムの財源

生活保護費 2.5兆円
年金の政府負担部分 10兆円
子ども手当て 5兆円
農家への個別所得保障 0.5兆円
所得税控除の撤廃 5兆円
所得税の90年水準への復帰 7兆円

合計 30兆円

このほか、失業保険の廃止、実質的に所得分配として機能している「無駄な」公共事業の廃止も可能となる上、行政コストの削減もできるので、確保できる財源はこれを大きく上回る。

以上から、月額5万円を5000万人に給付するベーシック・インカムは大増税無しに実現可能だということがわかる。

2)ベーシック・インカムとインセンティブ


ベーシック・インカムを受け取ると、労働者の働く意欲が阻害されるとすれば、生産力=GDPが縮小し、結果としてベーシック・インカムの財源が確保できなくなる。

これは例えば、月額20万円も支給されれば、もちろん大きく労働意欲も阻害されると考えられるが、月額1万円なら何の足しにもならないので、全く阻害されないだろうと考えることが出来る。つまり、ベーシック・インカムが労働意欲を阻害するかどうかは給付額によって左右されるのである。これが生活保護の場合、制度として、労働すると支給が止まるようになっているので、最初から労働インセンティブは阻害される。ベーシック・インカムの場合は、基本的に稼げば、稼いだだけ所得が増える仕組みなので、インセンティブの阻害は起きない。

つまり、ベーシック・インカムとして適正な水準とは、最低限ギリギリの生存は確保されるものの、それ以上の暮らしは望めないレベルに抑えることだと考えられる。そうすれば、セーフティーネットとして命を守る機能は持つが、より良い暮らしをしたいという欲求を満たすには不十分であるから、働く意欲を低下させることはないだろう。


3)ベーシック・インカムと企業の生産性


ベーシック・インカムの導入に合わせて、現存の最低賃金法は撤廃し、企業は自由な経済活動ができるようにすることが重要である。そもそも最低賃金は労働者の生活を守るために作られた法律・制度である。しかし、いまやベーシック・インカムにより、労働者は最低限の生存は保障されている。ならば、企業が労働者の生活を守らなくても、ベーシック・インカムという制度が守ってくれるので、これら企業に課せられた規制は必要なくなる。

また、企業にとっては失業保険の企業負担分からも解放される。だから、全体として、企業負担は軽減されることとなり、より活発な企業活動が可能となり、生産性は上昇するだろう。

ただし、最低賃金がなくなっても、必ずしも賃金が自動的に下落するわけではない。そもそも、賃金は労働力の需給によって決まっているとするならば、最低賃金法がなくなったからといって賃金が自動的に下落するものではないからだ。

4)ベーシック・インカムと物価上昇(インフレ)


ベーシック・インカムが導入されたところで、大きな物価上昇は起こらない。なぜなら、ベーシック・インカムの財源は勤労者所得350兆円の一部に過ぎない。マクロ(国全体)で見れば、この350兆円はこれまでも誰かの所得だったわけだから、市場に出回るお金の総量自体が増えるわけではない。

但し、高所得者から低所得者への所得の移転となるから、高所得者と低所得者の消費性向の違いの分だけ、インフレ傾向になることは考えられる。

また、現在、日本は20年近くのデフレ不況にあるが、その最も大きな原因は、労働者が将来の失業や老後の不安のために、消費を増やさず、貯蓄に回していることが指摘できる。これが、ベーシック・インカムが導入されると、失業後も老後も、最低限の生存は保障されるようになるので、貯蓄へ回す必要がなくなり、消費が拡大・安定すると考えられる。

つまり、ベーシック・インカムが導入されれば、日本は現在より消費性向が高く安定した経済となるだろう。



【関連】全員に毎月8万円一律に配れ(堀江貴文) 
「ベーシック・インカム」を支持します(山崎元)
ベーシック・インカムに賛成するのに十分なたった一つの理由(小飼弾)

posted by philnews at 22:25 | Comment(7) | TrackBack(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2009年10月07日

岩田規久男「日本銀行は信用できるか」

書評: 岩田規久男「日本銀行は信用できるか」(講談社現代新書)

日本は1992年からデフレを伴う経済の長期停滞である「失われた10年」を経験した。インフレ・デフレを表すGDPデフレーターは1997年を除いて現在に至るまでマイナス、つまり、デフレである。そのため国の経済力を示すGDPも、名目で見ると、2007年の名目GDPが1997年の名目GDPと同じ、つまり、日本は10年間全く成長していなかったことになる。そして、2008年にはアメリカを震源とする金融危機、世界同時不況に巻き込まれ、2009年の名目GDPはなんと1992年、つまり17年前と同じ水準にまで落ち込んでしまった。現在、如何にしてこの大不況から抜け出すのかが国としての最大の課題として突きつけられている。

[世] 名目GDPの推移(日本)

一般的に、政府が持つ経済対策(景気対策)の手段としては財政政策と金融政策の2つがある。このうち、財政刺激策は中央政府によって行われ、金融緩和は中央銀行(日銀)によって行われる。

にもかかわらず、日本のメディアは財政支出についての政治家の発言は事あるごとに報道するものの、日銀の行う金融政策についてはほとんど伝えない。例えば、民主党による補正予算の停止や、亀井静香金融相によって提唱された「金融モラトリアム」については連日メディアで騒がれていたが、日銀が「緊急対策」であった社債買入れの解除を示唆したことや、同時に企業金融支援特別オペの継続の有無が懸念されたこと、そして、日銀は9月のマネタリーベースを減少させていたこと等はどれくらいの国民が知っているだろうか?

しかし、近年、経済学の世界では景気対策については財政支出よりも、金融緩和のほうがより重要であるとの見方が主流でさえある。


岩田規久男 「日本銀行は信用できるか」(講談社新書)は日銀による金融政策の問題を正面から取り上げたスリリングな本だ。

本書で岩田は日本銀行はどんな銀行なのか?という基本から始まって、日銀がどのような人たちによって構成され、日銀の政策が誰によって、どのように決定されているかの、そして、日銀がこれまでどのような金融政策を実施し、どのような効果がもたらされたのかなどをデータに基づき、しかもわかりやすく詳細に検討している。

例えば、金融危機以降、各国政府が金融の大幅な量的緩和策を実施する中、日銀の対応はどうだったのか?2008年9月から2009年5月までのアメリカ(FRB)、イギリス(中央銀行)、日本(日銀)の資産増加率(市場への貨幣供給量の増加率)を見てみると、米、英はそれぞれ2.4倍、1.9倍と倍増させているのに対し、日銀は、なんと2%の増加に過ぎない。他国と比べ、日本はもともと低金利を継続させていたので、量的緩和の余地が少なかったとは言え、FRBの「ゼロ金利でもやることは沢山ある」という態度と、日銀の「できるだけ早くゼロ金利をやめたい」とする態度には大きな開きがある。

日銀が不況・デフレの下にあって積極的なインフレ政策を採用せず、「通貨の価値を守る」政策しか採用しないのにはわけがある。日銀は1998年の新日銀法によって金融政策の目標と手段について、政府からの独立性を与えられているのだが、その法の中で日銀に与えられた目的は「物価の安定」と「信用秩序の維持」なのである。ここにはアメリカのFRBが課せられた「最大の雇用の確保」という項目がない。

インフレ率(デフレ率)と失業率の間に相関があることはフィリップス曲線としてよく知られている。日本の場合、デフレがわずかに進行するだけで、大きく失業率が上がるという関係がある。しかし、雇用の確保を義務付けられていない日銀からすれば、失業率が上昇してでも、インフレを抑制することの方が重要だとする考えがあるのではないだろうか?

岩田規久男は本書の中でインフレ目標の設定を提言する。具体的には政府が2-3%のインフレ目標を設定し、日銀にコミットさせる。これまでインフレ目標政策を導入してきたニュージーランド、オーストラリア、イギリス、カナダ、スウェーデンでは、どの国もこのインフレ目標政策によりインフレ率を一定の範囲に収めつつ、経済成長率を高めることに成功してきた。

このように岩田規久男「日本銀行は信用できるか」は、あまり知られていない、しかし実は最も重要である日銀の金融政策について、とてもわかりやすく説明したスリリングな本だ。同じく岩田規久男 「世界同時不況」(ちくま新書)と合わせて読むと、世界同時不況の全体像と、脱出法、そしてそのための金融政策についての理解が進むものと思われる。


posted by philnews at 21:02 | Comment(0) | TrackBack(2) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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